米国の2日後にグアテマラもエルサレムに大使館を移した。その理由にある中米国家の悲哀

 グアテマラは米国に続いて5月16日、イスラエルのエルサレムに大使館を移転させた。  その開館の式典にはジミー・モラレス大統領そしてネタニャフ首相も参列した。その席でモラレス大統領は「両国の戦略的同盟と協力をより強固にすることを希望し、我が国は世界に向けての玄関のようなものだ」、「なぜなら、グアテマラは勇気ある決断をしたことで、多くの国が我々の進展を観て、我々の行動と決定を参考に決断を下そうとしているからだ」と述べた。  それに答えてネタニャフ首相は「この友情のこもった精神に応えて歓迎の意を表す」、「ここから1キロ先に『グアテマラ通り』も存在している」、「次のラテンアメリカへの外遊の際にグアテマラを最初の訪問国にしたい」と語った。  実はこのエルサレム移転について、グアテマラの最高裁は同国の大使館をエルサレムに移転させることに反対の採決をしている。しかも、アラブ諸国21か国からなるアラブ連盟から、グアテマラに対し、もし大使館をエルサレムに移転するようなことをすれば、アラブ諸国はグアテマラの3大輸出品目であり、アラブ諸国で消費されることが多い「カルダモン」の輸入をボイコットする意向があることが伝えられており、もしボイコットされたら、グアテマラの国家経済に重大な損害をもたらすことになるのは必至であるとされていた。  にもかかわらず、昨年12月の国連総会でのエルサレムをイスラエルの首都と認定した米政府の決定を無効とする決議では128カ国が賛成を表明したが、グアテマラは反対票を投じ、今回の移転と相成った。

主要輸出品を犠牲にした決断

 スパイスの女王とも呼ばれるカルダモンは、コーヒー、バナナに並ぶグアテマラの主要輸出品目だ。昨年のカルダモンの輸出額は3億6660万ドル(396億円)であった。アラブ諸国はそのお得意様のひとつで、香辛料として使用し、またカルダモンコーヒーとして愛飲されている。  グアテマラではカルダモンの8割は輸出を対象に栽培されており、小規模な生産業者が4万軒いるという。アラブ諸国がこの特産品の輸入をボイコットするような事態になるとグアテマラの国家経済に重大な損害をもたらすことになるのは必至である。(参照:「Clarin」)  グアテマラはなぜ、重要な輸出品目であるカルダモンを犠牲にしてまで、アメリカに追従し、大使館のエルサレム移転を敢行したのか?
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中米国家を脅かすトランプの存在
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