グアテマラが、アラブ諸国によるカルダモンボイコットの経済的損失という危険を犯してでも、モラレス大統領は敢えて米国そしてイスラエルの意向に追随する選択をした。その理由は、トランプ大統領が実施している移民排斥策からグアテマラをその対象国から外してもらうことにあった。そして、イスラエルとは70年の交流があり、イスラエルからの技術給与などを今後も期待しているからである。
トランプ大統領の移民排斥策で現在懸案になっているのは一時保護資格(TPS)制度の廃止である。米国は1990年にブッシュJr.大統領の政権時に、自然災害や内戦などで被害を受けた国を対象に米国での在住を一時的に認めた。10カ国がその対象国で、44万人が当初その対象とされた。グアテマラもこの10カ国のひとつである。
ところが、トランプ大統領はこの制度を廃止して、米国での在住許可を無効にして本国に帰国するように命じたのである。ニカラグアやハイチからの移民にはそれが既に適用されている。
モラレス大統領はどの国よりも先にエルサレムへの大使館移転を決めてトランプ大統領から特別待遇の国になろうとしたようである。
実際、モラレス大統領は2月8日にホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、トランプの口からエルサレムへのグアテマラ大使館移転の決定に直接感謝を受けた。
しかし、この決断によって、トランプがグアテマラ移民に対して米国からの退去を命じないという約束はない。しかし、モラエス大統領には僅かでもその可能性に賭ける必要があった。というのも、現在、米国には合法そして非合法とでおよそ100万人のグアテマラ出身者が在住していると言われているが、彼らが米国から退去するように命じられれば、グアテマラの国家経済に多大のマイナス影響を与えることになるからだ。
イスラエルとの繋がりはイスラエルが建国された時からの繋がりである。1947年にイスラエルが独立宣言をし、米国が先ずそれを承認した後、ここでもグアテマラが2番目に承認国となっている。
その後、グアテマラは米国とソ連の影響下で1960年から1996年まで内戦が続いていた。24万5000人の犠牲者を出した内戦だが、両国の冷戦が終了したら、グアテマラへの両国からの支援は途絶えることになった。何も生み出さない内戦だったのだ。ところが、この時にグアテマラ政府と民族革命連合との間で、仲介役を果たした国があった。それが、イスラエルであった。イスラエルは、グアテマラの和平合意に協力したのである。(参照:「
Clarin」)
このような機縁もあって、グアテマラにとってイスラエルは重要な国となっているのだ。
同時に、モラレス大統領も信仰しているキリスト教福音派がイスラエルを擁護する考えと同調したことや、ユダヤ同盟基金という組織がグアテマラ議会でエルサレムを首都と認定することに合意を得る為のロビイングを積極的に展開したことも、今回の大使館移転を後押ししたとされている。