カタルーニャのキム・トッラ新知事 photo/Omnium Cultural via flickr(CC BY-SA 2.0)
5月14日にカタルーニャ州の新州知事にキム・トッラ(Quim Torra)が選任され、17日、州知事に就任した。
就任式には慣例になっているスペイン国旗は存在せず、スペイン政府からの代表も不在。また、州知事としての宣誓にはいつも慣例となっている「スペイン憲法そしてスペイン国王に誓って任務も遂行する」という言及もなかった。
就任式における今回の振舞いについて、スペイン政府のスポークスマンはスペイン憲法に誓ってという宣誓のない就任式は合法か非合法か国家諮問委員会の判断に委ねる意向だという。
スペイン政府サイドがこのような挙に出たのも理解できないわけではない。キム・トッラは極度の独立支持者で、スペイン人排斥主義者であるからである。しかも、プッチェモン前州知事に遠隔操作された人物なのだ――。
昨年12月21日に州議会選挙が実施されたが、それから5か月を経過しても州知事が選任されない場合は、憲法規定で新たに選挙の実施が義務づけられていた。しかし、どの政党も新たな選挙の実施は望んでいない。
世論調査によると、仮に選挙を実施すればプッチェモンが率いる政党が議席を失うという予測もある。仮に選挙に臨んで議席を失うようになると、独立支持派3政党の議席数が過半数を割る可能性も出て来る。そうなると、州議会での支配権を失うことになる。
一方、独立反対派の間でも政党間の統一が取れず、過半数の議席を確保することができない状態にあることから、新州知事候補を擁立できないという事情がある。新たに選挙に臨んでも同じ結果になる可能性もある。
また、カタルーニャ市民の間にもこの問題の影響が波及し、家族間でも対立を生むといった事態にまで発展しているケースもある。
プッチェモンはドイツで拘束されて以来、現在ベルリンに滞在している。彼は自らを「カタルーニャ共和国建国のための評議会」の亡命した委員長という認識でいる。
一方のスペイン政府は、プッチェモンは憲法に背いて共和国を建国しようとした反逆者だと見做して、ドイツの法廷にスペインへの身柄の送還を要請している。
ドイツ法廷での最終の判決は年内には下されるであろう見通しだが、仮にプッチェモンがスペインに帰国すれば、反逆罪や公金横領罪などの容疑で逮捕されて懲役30年の刑が下される可能性がある。だから当然の如く帰国を望んでいない。
そこでプッチェモンは州知事候補にキム・トッラ(55歳)を指名したのである。