カタルーニャ州新知事は「スペイン人排斥主義者」!? 長引きそうなカタルーニャ問題
もちろん、キム・トッラには狙いがある。その狙いとは、スペイン政府が彼らを違憲だとして解任させれば、ヨーロッパでスペイン政府がまた州政府に干渉して民主政治を妨害したと喧伝するつもりなのである。そしてカタルーニャの独立を支持する動きがヨーロッパで高まることを企んでいるのである。(参照:「El Mundo」)
キム・トッラは議会で州知事になることが承認された日の翌日15日にはベルリンに飛んでプッチェモンを訪問している。プッチェモンから今後やるべきことの指示を受ける為である。プッチェモンが内心計画していると言われているのは、キム・トッラの政権を今年11月まで持たせてた後、州議会選挙に打って出ることである。それまでベルリンから遠隔操作でキム・トッラにやるべきことを指示してバルセロナとベルリンで二つの政府を併存させることがプッチェモンの狙いなのである。
スペインの諜報機関であるスペイン中央情報局(CNI)は、カタルーニャの市民の間で独立を支持するグループ「共和国擁護委員会(CDR)」と独立反対派の「憲法擁護し独立反対グループ(GDR)」の対立が顕著になっていることを指摘している。5月に入ってCDR500人とGDRの300人が格闘しそうな場面もあったそうだが、カタルーニャ自治警察が間に入って対峙するだけで終わったという。(参照:「OK DIARIO」)
独立を鮮明に表明したキム・トッラが州知事に選出されたことから、カタルーニャの企業連合の会長であるジュセップ・ボウは州政府の行政が麻痺し、イニシアティブも欠如し、行政間の対立も顕著になる可能性があることを懸念して、「法の安全性が欠け、外国からの投資にブレーキがかかり、それが雇用に悪影響するようになる」と指摘してカタルーニャの将来を深く懸念している。(参照:「Libre Mercado」)
この懸念はすでに具体的に表れており、昨年10月から今年3月までで4550社がカタルーニャから本社を他の自治州に移転させている。移転先として一番多いのはマドリード州である。それに続いてバレンシア州やアラゴン州にもカタルーニャからの移転企業が増えている。
その影響もあって、カタルーニャ州での2017年度の法人税の歳入は2016年に比較して17.8%減少している。これは自治州間で最高の減収率である。
1992年のバルセロナオリンピックに向けてインフラ整備から始まってスペインが一丸となってバルセロナを国際都市として育ててきた。
しかし、その発展した都市が今少しづつ崩れて始めている。
<文/白石和幸 photo by photo by Omnium Cultural via flickr(CC BY-SA 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
カタルーニャの混乱は続く……
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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