ロシア警察対原理主義団体 日本人バンドが巻き込まれた騒乱
欧州で極右勢力や宗教右派による表現弾圧が増えている。ヘヴィーメタルバンドへの不当な訴訟や、ライブの中止を求める抗議が相次いでいるのだ。(参照:欧米で拡大する極右&宗教右派によるヘヴィーメタルバンドへの弾圧が増えている!)おおっぴらに政治や宗教をテーマにするバンドが少ない日本では、こういった状況をイメージするのは難しいかもしれない。しかし、実はそんな現場に居合わせた日本人バンドがいる。
結成から20年、今年春にもツアーでヨーロッパ各国をまわるなど、国内外で人気を博しているバンド・SURVIVE。彼らが表現弾圧の生々しい実態に遭遇したのは、今から4年前、ロシアでのことだ。当時、SURVIVEはポーランドのブラックメタルバンド、BEHEMOTHの「ザ・サタニスト」をプロモートするツアーに帯同していた。
今年春にもポーランド当局から訴訟を起こされるなど、BEHEMOTHは極右勢力や宗教右派から疎まれているバンド。ましてや、「ザ・サタニスト」というアルバムを引っさげてツアーを回れば、キリスト教原理主義団体との衝突が避けれないのは明白だった。SURVIVEのヴォーカル・ギターを務めるNEMOは次のように振り返る。
「’14年のロシアツアーは抗議が殺到して、結局、日程の半分ぐらいがキャンセルになった。無事に開催できた公演も、直前になってそれまでアナウンスされていたのとは別な会場でやったり、なかなか日本じゃ味わえない体験だったね」
現地プロモーターが水面下で動き、会場を変更するなどして、なんとか原理主義団体の目をかいくぐり、日程をこなしていったSURVIVEとBEHEMOTH。しかし、シベリアの中心都市・ノヴォシビルスクで事態は急激に悪化した。
「その日もチケットを持っている人にだけ告知して、2日前に会場を変更したんだよ。それでもバレちゃったみたいで、会場に着くと周りは人が多くて騒がしかった。俺たちは一旦食事しに出かけたんだけど、しばらくして会場に戻ったら(キリスト教原理主義団体が)手をつないでバリケードを作ってたんだよね」
さらに、この事態を収めるために武装した警察がやってきたが、火に油を注ぐ結果となってしまう。
「抗議しに来てた団体と警官で乱闘騒ぎになったんだよ。SWATみたいな格好をした警察官が、抵抗する人間にタックルしたり、スゴい光景だった。倒れたヤツの頭をミリタリーブーツで蹴りまくったり、イカれてたね。やられたヤツは気絶したまま引きずられて、勾留されてったよ」
NEMOによれば、抗議団体側の人間が銃を発砲した音を複数人が聞いていたそうで、それが武装警察をヒートアップさせてしまったらしい。まさに悪夢だ。SURVIVE一行は現地のファンに静止され、暴力沙汰には巻き込まれなかったが、裏口からこっそり会場内に戻るとセキュリティの顔にも殴られた跡が。紙一重で助かったが、会場内や近くにいたらどうなっていたかは容易に想像がつく。
結局、この日の公演もキャンセル。SURVIVEは騒ぎが治まったあと、ファンと写真を撮ったり、サインをして、ファンを気遣った。
地元警察と原理主義団体が衝突
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