右がAMLOことアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール候補。 photo by Eneas De Troya via flickr (CC BY 2.0)
メキシコは7月1日の大統領選に向けて熱戦が繰り広げられているが、その陰に隠れて3400の議席を争う統一選挙も実施される。選挙キャンペーンが始まった2017年9月8日から今年4月8日までに78人の候補者が殺害され、警察官も178人が危害を受けているという事実は余りニュースにならない。殺害は6つの州(ゲレロ、オアチャカ、プエブラ、ベラクルス、メキシコ自治)に集中して起きている。
議員になるために選挙に立候補するのも主に上述6州では命がけであるというのもものすごい話だが、それ以上に話題になっている話がある。メキシコでは、大統領の任期が1期6年と制定された1934年以来初めて、「左派系」の大統領が誕生する可能性が高くなっているのだ。
これまでは、右派系の2大政党「制度的革命党(PRI)」と「国民行動党(PAN)」から大統領が就任していた。2000年から2012年にPANのフォックスとカルデロンの二人の大統領以外は1934年からPRIの議員が大統領に就任していた。現在のペーニャ・ニエト大統領もPRIに属する政治家である。言うまでもないが、メキシコで左派系の大統領が登場しないという背景には国境を接する米国からの干渉が常にこれまであったからである。
ところが、今回の大統領選挙では初めて左派系議員アンドゥレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador 64歳)が大統領に就任する可能性が非常に高くなっている。彼の名前が長いことから報道メディアを始めメキシコではそれぞれイニシアルを取って「アムロ(AMLO)」と呼んでいる。
アムロは伝統ある左派政党「民主革命党(PRD)」に当初属していたが、今回の選挙に向けて新しい政党「国家再生運動党(Morena)」を創設して選挙に臨んでいる。
彼は今回の選挙が3度目の挑戦である。諺どおり「三度目の正直」が現実となる可能性が非常に高い。ブラジルのルラ元大統領とよく比較されている。ルラも大統領選に3度挑戦して大統領になった人物だ(※ただ、アムロはルラほど左派ではなく中道だとも言われている)。
候補者の中で上位3人、アムロそしてPANのアナヤ(Anaya)とPRIのメアデ(Meade)は、世論調査でそれぞれ41.4%、27.7%、22.2%の支持率になっているという。(参照:「
El Pais」)
これまで2万回行われた選挙前の世論調査データを分析すると、勝利の確実性はそれぞれ85%、12%、3%という比率となって、アムロの勝利はほぼ確実と見られるのだ。「El Pais」紙はアムロの勝利がほぼ確実であるというのは、“あたかもクリスティアーノ・ロナウドがペナルティーキックを外すことに匹敵する確率である”と報じている。即ち、アムロが勝利を逃す可能性はほぼ無い。しかし、100%勝利するという確証はないということなのである。