仮想通貨市場を再び“亡霊”が襲う!? 破綻した「Mt.GOX」がいまだに仮想通貨市場を揺るがす理由

普通に破産処理するとカルプレス氏が濡れ手に粟

 破産法上、債権者に対する配当は「100%」が上限となるため、このまま破産処理が進められれば、超過分の約1300億円(1800億円-負債456億円)の“残余資産”は破綻したマウントゴックスを通じて、その株主に配当される見込みだ。同社はTIBANNE(ティバーン/’15年1月に破産)という会社が88%の株を保有するが、そのティバーンはマウントゴックス破綻時の社長であるカルプレス氏が100%の株を保有する会社。つまり、1100億円以上のお金がカルプレス氏の手元にわたる可能性が高いのだ。  一方、破産処理が進んだところで、マウントゴックスにビットコインを預け入れていた債権者は、ごくわずかな現金しか受け取ることができない。破産開始日のレートに準じて1BTC=5万円での配当が予定されているためだ。直近のビットコインのレートと比較すれば、20分の1以下の安さだ。  このままいけば、債権者は100%の配当を得ることができるが、そのビットコインの換算レートは現在の20分の1に。経営責任を問われるはずのマウントゴックス株主が1100億円以上のお金を受けとることになり、その原資をねん出するために仮想通貨市場は残る16万BTC&BCHの売り圧力に晒される……といったことが予想される。 マウントゴックス資産&負債変化 これに対して、一部の債権者の依頼を受けて、昨年11月にマウントゴックスの民事再生手続き開始の申し立てを行ったのが、前出・福岡弁護士だ。 「民事再生法は倒産法の1つ。その特徴は、債権者の過半数以上の賛成が得られれば、法律に反しない限り、自由に再建計画を進めることができる点です。つまり、ビットコインでの配当も可能。’14年の破産手続き開始前にマウントゴックスは一度、民事再生の適用を棄却されていますが、当時と今とではまったく状況が異なる。なるべく多くの配当を、という債権者の当然の希望を叶えるには今から民事再生を行うのが最善の策でしょう」

あちらたてればこちら立たず。八方塞がり?

 ただし、そのハードルは高い。通常、債務者(当該企業)が民事再生手続き開始の申し立てを行った場合、その可否が下されるまでの時間は1週間程度。一方、債権者側が申し立てを行った場合に要する時間は「事案によるが1~2か月程度」(福岡弁護士)という。だが、今回の場合はすでに5か月が経過していながら、裁判所の判断が下されていないのだ。 「判断が遅れている理由は2つ。1つは、ビットコインという仮想通貨が問題となっており、しかもそれが急騰したという特異なケースであるという理由。もう1つは、民事再生手続きを開始するか否かを判断する調査委員による調査報告書の影響と考えています。その報告書には『民事再生手続きの開始決定が相当である』とは書かれているのですが、調査委員が前提条件を満たす必要があると指摘しているのです。『金銭債権者の利益が十分に保護される必要がある』と。  債権者のなかにはビットコインをマウントゴックスに預け入れていた債権者と、現金だけを預けていた債権者やマウントゴックスに売掛債権や貸付債権を持っている債権者(金銭債権者)もいます。この金銭債権の総額は現在、裁判で争っているものも含めて170億円ぐらいあるのですが、破産手続きでは100%の配当が可能です。しかし、民事再生手続きを進めてすべての債権者と平等に配当を実施すると100%配当が実現できなくなる可能性が出てくる。  BTC債権者に対する配当が破産手続きを進める場合よりも、価格が上昇した現在の高い額となるため、大幅に増える可能があるからです。『金銭債権者の利益』とは、言ってみれば破産手続きで実現可能な100%配当。これを満たすことが、民事再生することの前提である、というのが調査委員の意見なのです」  BTC債権者の利益の保護を優先すれば金銭債権者の配当が減り、金銭債権者の利益保護を考えればBTC債権者の配当は1BTC=5万円換算という少なさに……。八方ふさがりに見えるが、実は民事再生処理ならば、両者の利益を最大化することが可能だという。 「民事再生手続きを進める際には、旧役員等の再生債務者が進める場合と、裁判所の選任を受けた管財人が進める場合と2つのパターンがあります。マウントゴックスの場合は、前代表が刑事責任を問われており、業務を委ねるのは適切ではないので、管財人を選任するのが妥当でしょう。その管財人が再生計画案を作成することになるのですが、実は民事再生では債権者も再生計画案を提案することが可能です。そのうえで、債権者の過半数以上の賛成が得られれば、計画を実行に移すことが可能。それを見越して、私のほうですでに再生計画案の骨子を作成済みです。要点は3つ。 ①速やかな配当の実施、 ②ビットコイン配当の実現、 ③金銭債権者への原則100%弁済、です。  つまり、金銭債権者には原則100%配当を実施して、残りの資産をBTC債権者へ配当するというかたちです。BTC債権者への配当はBTC換算で10~20%程度にとどまると予想されますが、それでも1BTC保有していた債権者には現在の価格に換算すると10~20万円相当のビットコインが配当できる計算になります。破産続きを進めるよりも、大幅にBTC債権者への配当を増やすことが可能です」
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債権者利益保護のためには民事再生がベストか
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