タイでは白い鶏卵はまず見かけない
隣接していても国によって文化や考え方が違うことは当たり前で、日本は特に島国だから、海外に出かければ大きな違いに出くわすことは多い。食べものも食べ方や食材など、同じようなものでも考え方が違う。
そのひとつが「卵の生食」だ。外国人にとって、日本の「卵の生食」は驚愕の食習慣として言われることは少なくない。
そのため、卵の賞味期限ひとつとっても、日本とそれ以外の国だと大きく違う。日本では生食が前提ということもあり、賞味期限の設定は夏場を想定した気温25度程度の中でサルモネラ菌による食中毒を起こさない程度=1週間程度と設定されている。一方、例えばタイでは生で食べる文化がないため、賞味期限はスーパーの生卵で2週間から約1か月になっているのだ。
高級食材スーパーの卵も消費期限が1か月近くで設定されている
多数の卵かけご飯ファンから「卵かけご飯がない生活は考えられない」と聞いたことがある。好きな人にはたまらないものであるが、日本国内ではいつでもどこでもなんら問題なく食べられるものであっても、タイに来れば特別な店にでも行かない限り、生卵を白米にかけて食べることはできなかった。特に南国の生卵はサルモネラ菌などの心配もあり、生は危険極まりないからだ。
前述した通り、タイでは加熱を前提にしているので、輸送も日本ほど丁寧とは言い難い。ピックアップトラックにむき出しで卵を積み込み、炎天下を配送先に届ける。ときどき渋滞の中を卵満載のトラックを見かけることもあるが、いつかピヨピヨッとひなが孵るのではないかと筆者は心待ちにしているほどだ。
屋台で調理をする女性。その横を見ると卵が炎天下に置かれたままになっているのがわかる
しかし、生食がタイの家庭でできなかったのは昔の話で、今、バンコクであれば卵かけご飯が簡単に食べられるようになっているのをご存知だろうか? 日本人御用達のスーパーマーケット、あるいは外国人向けのスーパーでは新鮮で清潔な、生食を前提とした生卵が販売されているのだ。
生食が前提の生卵パッケージにはだいたい日本語の表示がある
もちろん、現地の一般的な生卵に比べて値段は高く、取材時の価格ではタイのスーパーの生卵は1個当たり5.8バーツ(約21.5円)に対し、生食可能なものは9バーツ(約33円)であった。日本では1個20円前後が平均価格と考えると、タイの生卵かげご飯はコストが高い。タイにおいては特殊な食材であり、バンコクの和食店がどこも東京の飲食店と比較して高いことを見れば、卵かけご飯が高くなるのは仕方がない。