「土俵は女人禁制」批判への打開策は世界遺産に学べ!?

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 4月4日に京都府舞鶴市で行われていた大相撲舞鶴場所で舞鶴市長の多々見良三氏が倒れた際に、複数の女性が土俵上で心臓マッサージを施し、救命措置を取っていたにもかかわらず、「女性は土俵から降りてください」という場内アナウンスが流れたことは、世間でも疑問視され大きな話題となった。  その後、静岡市で4月8日に開かれた大相撲の春巡業「富士山静岡場所」では、恒例の「ちびっこ相撲」に際して協会側から「女の子は遠慮してもらいたい」などと連絡があったことが報じられるなど、「相撲における伝統的しきたり=土俵は女人禁制」が大きな話題となっている。  実際の所、相撲の「女人禁制」というのは「伝統」だとは言えないそうだ。吉崎祥司氏と稲野一彦氏が記した論文「相撲における『女人禁制の伝統』について」(北海道教育大学紀要、2008年8月)によれば、“歴史をひも解いてみると,女性と相撲は古来より密接な関係を保ってきたことが明らか”であり、“「相撲は神道との関わりがあるから女性を排除する」という論理が,明治期以降に,相撲界による地位向上などの企図にもとづいて虚構されたものであるという帰結が導き出される”と書かれている。  その「虚構」の支柱にされたのが、「神道」における「穢れ」という考え方である。上記論文によれば、“神道の「桟れ思想」では「死」「血」「出産」をそれぞれ「死桟(=黒不浄)」「血桟(=赤不浄)」「産桟(=白不浄)」という桟れとみなし、忌避する。そのさい、桟れには,触れることで伝染するという「触桟観」が古くからあったことから、黒不浄や赤不浄、自不浄の状態にある人々を一定期間隔離するという習慣があった”と説明されている。こうした「穢れ」思想が相撲における女人禁制の根拠となっているのだという。  この「穢れ」思想による女性排除だが、今回の相撲の一件で再び取り沙汰される前に、とある場所で問題視されていたのをご存知だろうか?  それは、昨年、世界遺産として登録された福岡県宗像市の「沖ノ島」である。

女人禁制批判に「逆転の発想」!?

 福岡県宗像市の沖合60km。玄界灘に浮かぶ絶海の孤島である沖ノ島は、島全体が神域とされ、一般人の立ち入りを拒む島として扱われてきた。全周4kmにも満たない小さな島だが、日常的な航路はない。しかし、航路がない以前に、この島は女人禁制。男性であっても一般人の上陸が許されるのは通常は年にたった一回。毎年5月27日に開かれる沖津宮現地大祭のときだけという島だった。このときに上陸できる男性も、日本海海戦の行われた5月27日に行われる抽選で選ばれる約200人という徹底具合(2017年は220人)。それ以外は、清掃奉仕のボランティアや神官のみ(10日間ごとに交代制)が上陸を許されており、それらの人も清めの儀式を行わなくてはいけないのだという。
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女人禁制から男性も立入禁止へ
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