NASA新長官、15か月の空白期間を経て地球温暖化懐疑論者の現役共和党議員出身者に決定。トランプ政権の狙いとは?

第13代NASA長官に就任したジェイムズ・ブライデンスタイン氏(前) Image Credit: NASA

 はたして、“Make America Great Again”の声は宇宙にも届くのか――。  2018年4月23日、トランプ政権下における米国航空宇宙局(NASA)の長官として、ジェイムズ・ブライデンスタイン氏が就任した。トランプ政権が発足してから15か月間、不在の状態が続いたNASA長官の椅子がようやく埋まった。  ブライデンスタイン氏は共和党の下院議員出身。NASA発足から60年の歴史の中で、政治家出身の長官は初となる。  しかし、同氏のNASA長官就任にあたっては反対の声も多く、米議会上院による承認をめぐる投票でも、賛成と反対がわずか1票差という危ういものだった。いったいブライデンスタイン氏とはどんな人物なのか、そしてNASAはどこへ行くのだろうか。

史上初の政治家出身のNASA長官

 ブライデンスタイン(Bridenstine)氏は1974年生まれの42歳。米海軍のパイロットとしてアフガニスタン戦争などに参加し、2012年にオクラホマ州の下院議員として当選。以来、政治家としての道を歩んできた。  NASAは1958年に発足し、この60年の歴史の中で、13人が長官の椅子に座ってきた。歴代のNASA長官は、科学者や研究者として働いた経験を持つプロフェッショナルだったり、軍人や官僚出身でも、大学で理工系の学位を取得していたりといった人物が就くことが多かった。科学者、技術者としてのバックグラウンドがない政治家、それも現役の議員だった人物が就くのは、ブライデンスタイン氏が史上初のことである。  もっとも、議員として当選する前は、オクラホマ州タルサにある航空宇宙博物館に勤め、議員当選後は下院の科学・宇宙・科学技術委員会(Committee on Science, Space and Technology)のメンバーも務めていたなど、航空宇宙分野とまったく無縁というわけではない。  トランプ大統領は昨年9月の段階で、ブランデンスタイン氏を次期NASA長官に任命するとしていた。しかし、就任に必要となる議会での承認は大きく遅れた。  その原因としては、まず現役の共和党議員であることが大きいが、それ以外にも、気候変動(地球温暖化)に対して懐疑的な態度を示しており、NASA長官としての資質を疑問視する声が大きかったこともあった。また、同性婚に対して差別的な発言をしたことも問題視されていた。  紆余曲折を経て、4月19日に米議会上院での投票が実施されたが、賛成が50、反対が49というぎりぎりの結果だった。歴代のNASA長官はほとんど満場一致で決まっており、反対が約半数もいたというのもまた異例である。ちなみに結果からもわかるように、共和党議員の中にも反対者がいた。
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NASAの課題は山積
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