一般層へのウケ狙いを「媚び売ってんな」と言ってた奴は消えてった。「ダメリーマン成り上がり道」#4

変則MCバトルを批判していた人は業界から消えた

 ヒップホップ界隈での評価や内輪ウケよりも、一般層の反応や、キャッチーさを大事にする。そのような“外向きの視点を持つこと”は、MCバトルに限らず、イベントや事業を大きくしていくうえでは役立つ視点と言えそうだ。 「それ以外にも『人生相談MC BATTLE』とか『アイドル大好きMC BATTLE』とか、変則のMCバトルはいろいろとやりましたね。個人的に一番好きだったのは、ステージの真ん中にM男を座らせて、女のコ同士がののしり合う『女王様と豚野郎MC BATTLE』です(笑)」  M男を女のコがなじるMCバトル……。ある意味、話題を呼ぶのも納得だが、一般層へのウケを狙った試みに「軽薄だ」「媚び売ってんじゃねえよ」などの非難が生まれるのもいたしかたないだろう。。実際、このような変則MCバトルについても、「当時はメッチャ否定する人が多かった」という。 「でも、おもしろくて。こういうMCバトルを否定していた人たちは、今はもう業界に残っていない人ばかりなんです。逆におもしろがってくれた人たちは、Zorn the Darkness(現・ZORN)とか鎮座DOPENESSとか、錚々たるメンツでした。ここまで名前を挙げてきた変則MCバトルはYouTubeにも動画も上げていたんですが、鎮座さんはその動画を見てMETEORさんに『あれ面白いから出させて』って言ってくれて、DOMMUNEで放送した『女性口説きMC BATTLE』に出てくれました」  大物ラッパーも出演することで、大会の評判は着実に広まっていく。そしてMC正社員の名前も業界内で知られるようになっていった。 「『女性口説きMC BATTLEって誰が考えたの?』『MC正社員ってヤツらしいよ』みたいに名前が広まっていったみたいですね。その頃には、『戦慄MC BATTLE』を主催していたDJ会長も、『オレはもう辞める』とフェードアウトしようとしていて……。そこで『戦慄の戦(いくさ)っていう字、もらって大会を続けてもいいですか?』と頼んで、自分が主催の『戦極MC BATTLE』を始めました。そこでDJ会長が『いいよいいよ~』と譲ってくれたんです」  サラリーマンを続けながら、運営スキルやプロモーションを学んでいったMC正社員。ストイックなヒップホップ業界の人間からの風当たりも強かったが、ついに自分でイベントを主催するようになった。 <構成/古澤誠一郎> 【MC正社員】戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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