人権を軽んじ、国家を私物化する為政者に学生が蜂起! 広がるニカラグアのオルテガ大統領退陣運動

人権を軽んじ、国家を私物化していると若者たちから糾弾されているオルテガ大統領。11年間の独裁生活も終わりを告げるか? photo Cancillería del Ecuador via flickr(CC BY-SA 2.0)

 冷戦下の1970年代以来、伝統的に旧ソ連=ロシアと強い関係を保っていたニカラグアが変わりつつある。  中米ニカラグアで社会保障制度の改正によって市民の負担金が値上げされることに大学生が主導して抗議活動を起こしたのだ。すでに暴動による死者数は30人、首都マナグアを始め主要都市では暴動に便乗した市民によるスーパーなどでの強奪も発生している。  そして、この抗議活動が引き金となって、ダニエル・オルテガ政権の終焉を要求する運動に変化しているのである。

オルテガによって国家が私物化されていた独裁政権

 ニカラグアは1936年からソモサ家の独裁政権が1979年まで続き、国家は私物化されていた。この独裁政権への不満から武装蜂起したのがサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)であった。そのリーダーが現大統領のダニエル・オルテガである。  その後、米国とソ連の利害が錯綜して内戦を導いた。1984年に暫定的に国家が統一され、ダニエル・オルテガが大統領に就任した。その後、1988年に正式に国家が統一され、1990年に国連の監視のもとに大統領選挙が実施された。  しかし、当初の予想に反してオルテガが敗退し、ビオレタ・チャモロ女性大統領が誕生。彼女に続いて、二人の大統領が就任したが汚職などで、2007年にオルテガが再度大統領となり、現在まで11年間彼の政権が続いている。  そんなオルテガ政権だが、2016年の選挙では彼の夫人を副大統領に指名するなどソモサ政権と同様に国家はダニエル・オルテガに私物化され独裁色が強まっていたのだ。  オルテガ大統領とロシアのつながりは深く、そのため米国を牽制するためのロシアの重要な諜報基地となっており、また政治経済面でもロシアの影響が強い国となっている。  しかし、この暴動を契機として、反オルテガの機運が高まってきているのである。反オルテガ政権勢力は米国に支援を要請していることもあり、米国にとっても、この暴動の発展はロシアの影響力を押さえる絶好の機会と見ている。

大統領の憲法違反に蜂起した学生たち

 ダニエル・オルテガの終焉を要求する運動へと発展した暴動のきっかけは、社会保障制度の改悪であった。その内容はと言うと、現行の社会保障制度が、労働者の収入の6.25%の負担であったものが、7%になるというもので、また年金の支給額もこれまでのそれから5%を減額するというプランである。同様に、雇用主の負担金も19%から20%となり、2020年には22.5%まで値上げするというもので誰もが政府のプランに反対している。年金受給者は20万人で、300ドル(33000円)から500ドル(54000円)の年金だという。(参照:「BBC」)  大統領の独断によるこの改正案は憲法の規定を犯すもので、議会の承認を得た上で遂行されるべきものだ、と専門家は指摘している。しかし、11年間続いているサンディニスタの独裁政治が続いて来た結果、議会で承認を仰ぐといった手間を省こうとしているのである。そこには2016年の大統領の再選で72.44%の支持を得たという過信もオルテガにはあったようである。この選挙について反対派からは彼らの候補者の資格が剥奪されたことから選挙は無効だと見做していた。(参照:「El Confidencial」)
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人権を尊重しない政府
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