スタジアムの完成度、サポーターの熱気に見る「中国サッカー強国化」への“本気度”/中国・新皇帝の野望<2>

鹿島側サポーター

ACL鹿島アントラーズVS上海申花の試合が行われたスタジアムの、鹿島側サポーター席

 2017年に北京で開催された第19回共産党大会にて、習近平総書記は党規約まで改正し、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」なる文言を書き加えた。    すなわち、習近平皇帝の誕生である。これから十年、あるいは十五年以上権力の座にいるつもりらしい。実現すれば、ロシアのウラジミール・プーチン大統領といい勝負の長期政権となる。  そんな習近平がかねてから公言している野望がある。「サッカー大国」の建設である。  本当にそんなことが可能なのだろうか。中国サッカーの現状(鹿島vs上海申花)を視察しにきた筆者は前回(参照:「中国は、本当にサッカー強国になれるのか? 中国・新皇帝の野望<1>」)、ダフ屋を通じてようやくスタジアムに入ることができた。  しかし、その際にダフ屋が言っていた「sit」は大ウソだった。  定価より高いのはわかっている。別に今さら怒るつもりもないのだが、取材する身として一応「相場」は知っておきたい。そう思いチケットを隅々までねめまわしたが、「非売品」という文字があり、定価がいくらかは最後までわからなかった。  指定席の番号をたどると、バックスタンド側でゴール近くのサイドライン後ろにあるホーム側の応援席である。一応、座席はある。ただ、一つ問題があった。  Jリーグなら、大体どこのスタジアムでもゴール裏はみな立っていて、チャントの大合唱をしていたりする。そしてメインスタンドとバックスタンドにおいては観客は得点の瞬間をのぞきだいたい座り、大人しく上品に観戦しているものだろう。  しかし、上海は違う。メインスタンドも、バックスタンドも、観客は全員立ち上がり、殺気立った目で試合の展開を追い、ゴール裏に負けじと大歓声を張り上げている。  なおかつ、筆者が入場した時点で上海は2-0で鹿島を圧倒していた。観客の勢いは増すばかりで、とてもではないが座って試合を見られる雰囲気ではない。  筆者はスタジアム全体を見回してみた。事前情報収集で収容人数は約三万人と聞いていたが、目測で六割から七割の席が埋まっている。これならまだ十分人を入れられるのになぜ「満員御礼」で「当日券発売終了」なのかよくわからないが、それでも日本でACLの試合を開催するときの観客動員を考えると十分に上出来といえよう。すでに中国人サッカーファンの熱狂ぶりが本物であることはもう明らかだ。  スタジアムそのもののつくりはどうか。上海の中心街にあり、しかも地下鉄駅が直結していてアクセスは申し分ない。ピッチ周りに陸上トラックはない。つまりサッカー専用スタジアムである。  観客席はすべて屋根に覆われ、サポーターが雨に濡れる心配はない。雨が降り注ぐのはピッチ上で濡れるのは監督と選手だけだ。もちろん日本にもサッカー専用スタジアムはいくつもあるが、東京や大阪のど真中にはない。  おそらく東京から一番近い大規模サッカー専用スタジアムは浦和レッズの埼玉スタジアムということになろうが、このレベルのスタジアムが東京ドームがある水道橋に鎮座しているといえば何となくイメージがわくのではないか。  しかも、上海上港の本拠地スタジアム「上海体育場」が同じく中心地にある。  こちらは八万人を収容できるという。水道橋に加えて恵比寿にも大型スタジアムがあるようなものだ。大宮や柏にも確かにサッカー専用スタジアムはあるが、東京の中心からも最寄りの駅からも遠すぎる。ハコの大きさの問題もある。こういうスタジアムが大都市のど真ん中にあり、機能し続けていれば、サッカーが強くなっていくのは当然だ。
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中国の“サッカー強国計画”はお遊びではないことがわかった
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