だが、問題は翻訳者のみならず、翻訳を外注する企業側にも、機械翻訳を毛嫌いしている人が多い点である。事実、今回調査対象となった翻訳者のうち73%が「仕事における統計翻訳の使用の経験がない」と答えている。数年前までは統計翻訳は信頼できない技術であるとして、未利用率は99%と高かった。翻訳よりもはるかに先進的なニューラル翻訳の登場も相まって統計翻訳への嫌悪は薄らぎつつあるが、統計翻訳を許容している層は16.4%と依然として低い。
ホーキング博士の主張をきっかけにAI失業論が各地で囁かれているが、今回の調査で判ったのは将来を悲観視する翻訳者はいないという点だ。人間の翻訳者が機械に完全に置き換わることはあり得ないという見解はすべての回答者に共通して見られた。
翻訳プロセスを加速化する手段として機械翻訳を肯定的に捉えている人もいれば、準スタンダード的な言語品質を許容し、コンテンツが機械に翻訳される社会に現実的な視座で仕方なしに適応し始めている人もいる。
ローカリア国際オフィスチーフ ハンネス・ベン氏は、次のように指摘している。
「人間の翻訳者が生み出した翻訳物は機械翻訳が手がけたコンテンツとは本質的に異なる。そもそも、人間は繊細な動物であり、自分たちの言語を守ろうという本能が備わっている。だからと言って、AI翻訳を拒絶すべきだとは思わない。我々人間が機械に順応するのではなく、人間の自然言語の生成プロセスに機械翻訳を馴染ませるというスタンスを大切にすべきである」
<文/大澤法子 via
ロボティア>
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ロボティア】
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