駅ナカビジネスに不動産……。大阪メトロは目論見どおりに行くのか?

 4月1日に大阪市交通局が民営化されて大阪メトロとなり、ひと月近くがたった。早くも大阪市民の足には大きな変化が……などということはあるわけもなく、大阪市交通局時代と変わらずに地下鉄もバスも走っている。  当たり前のことだが、民営化からひと月足らずでは大きな変化があるはずもない。ただ、今後中長期的に見ると話は別。一体これから、“大阪メトロ”はどうなるのだろうか? 事情に詳しい鉄道ライターは次のように話す。

公営時代には関連事業で赤字も

a0002_003734_m「そもそも大阪市交通局の民営化は、公営交通としては初めての事例。似たような例では営団地下鉄の民営化で東京メトロが誕生したケースがありますが、営団は公営ではなく国と東京都が出資する特殊法人なので、微妙に異なります。 ただ、本質的には民営化によって期待されることはいずれも同じ。公営では難しい駅ナカなどの小売業や不動産業など関連事業に力を注ぐこと。特に、今後は人口減少によって運輸収入の減少が見込まれており、事業の多角化によって輸送事業を支えていく体制を整えていくことが求められています」  つまり、鉄道やバスでの収入が減少する中でも今まで通りの輸送サービスを提供するためには事業の多角化が不可欠ということ。民営化はそのための最初の布石とも言えるのだ。しかし、必ずしも目論見通りにことが運ぶとは限らない。 「大阪メトロでは経営陣に民間出身者を多く招聘するなど“民の知恵”を積極的に取り入れようとしています。ただ、それでも社員を含めて大半は大阪市交通局の職員。鉄道会社の関連事業と言えば、JR各社や大手私鉄が成功していることが知られており、特にJR九州は本業の鉄道事業では赤字でもそれを補って余りある関連事業の収益で上場にもこぎつけたほど。 しかし、実際には簡単なことではありません。JR北海道も事業の多角化を推し進めましたが、それも思うような成果が出なかったうえ、人的資源を関連事業に集中させたことが一因となって鉄道の安全性が損なわれる事態に陥った。結果、現在は経営危機とも言われる状況です」  大阪メトロでも同様の事態にならない保証はない。実際、過去に大阪市交通局が手掛けた遊園地「フェスティバルゲート」は大赤字を垂れ流して経営破綻している。同じ轍を踏む危険性も充分にあるのだ。 「万が一関連事業で赤字が膨らんでしまうと、それこそ本業の輸送サービスに影響が及んでしまう。さすがにトンネルなど巨大な土木構造物を持つ地下鉄路線が廃止されることは考えにくいですが、バスの不採算路線にメスが入れられることになるでしょう。 さらに、地下鉄も赤字路線に限って運賃の値上げなどの影響も考えられる。結果、大阪市民の足が守れないということにもなりかねないのです」  駅ナカビジネスや不動産などさまざまなビジネスチャンスが考えられるが、ほころびが出たときの影響は決して小さくはないのだ。
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事実上公営時代と変わらず
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