モチベーションファクター自分の意欲を高める要素ですので、自分のモチベーションファクターに合致した仕事をしている時は、ストレスを感じにくいものです。一方、自分とは異なる要素の仕事をしている時は、ストレスを感じやすくなってしまいます。
仕事をしていく上で、自分の意欲を高める仕事ばかりができるとは限りません。上司と部下の間で、お互いに何が得意か不得意かの理解が深まると、得意な仕事が回ってきやすくなりこともありますが、新しいメンバーと新しい仕事をするタイミングでは、それも期待できません。こうして、ストレスが蓄積してしまいます。
例えば、独自のアイデアを出して創造的な仕事をしていくことにモチベーションが上がりやすい自律裁量型の人は、そのような仕事をしている時よりも、会社が定めたプロセスやルールを厳守して安心確実に進める安定保障型の仕事の方がストレスを受けやすいのです。また、他者協調型の人は、他の人と競争して目標達成するということにストレスを受けやすいのです。
しかし、自分とは異なる要素の仕事の指示が来ても、ストレスを溜めなくて済んだり、ストレスを軽減できたりする方法があります。それが、自分のモチベーションファクターを見極めて、自分のモチベーションファクターに関連付けて業務を行うという方法です。
自律裁量型の人が安定保障型の仕事をする場合、そのまま自然体で取り組んだのであれば、伸び伸びと独創的に実施したいというモチベーションファクターは、ルール厳守の仕事からは満たされません。しかし、ルール厳守の安定保障型の仕事を、例えば「決められたルールの中で自分なりに工夫できることはないか」というように、自分のモチベーションファクターである自律裁量に関連付けると、途端に気持ちが晴れてやる気ができることが多いのです。
他者協調型の人が目標達成型の仕事をする場合、そのままでは、周囲と協力するというモチベーションファクターは、他の人と競争する仕事からは満たされません。しかし、他の人と競争する仕事を、例えば、「競争相手以外から助言を得たりして協力して行うことができないか」というように、自分のモチベーションファクターである他者協調に関連づけると、ストレスがたまりにくいのです。
このように自分のモチベーションファクターに関連付けて業務を行うためには、以下のスキルを、その順で繰り出していくとうまくいきます。
・自分のモチベーションファクターを見極める
・業務のモチベーションファクターを見極める
・自分のモチベーションファクターを業務に関連付けて発揮できる部分を見極める
業務を行う時に、抵抗感を感じたら、ストレスを感じた兆候です。そんな時に、このスキルを発揮してみることをお勧めします。最初は慣れないかもしれませんが、一週間くらい続けていると、気持ちが晴れていることに気づくことでしょう。
この方法は、一言でいえば、「気持ちを切り替える」方法です。しかし、ただ、「気持ちを切り替えよう」と掛け声をかけられたり、自分に言い聞かせたりしても、気持ちが変わるものではありません。このように、身に付けたいスキルを分解してコアスキルを反復演習することが重要なのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第80回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある