増えるローカル線廃線の陰で、あまり報じられない廃線後の状況と沿線自治体住民のホンネ

「鉄道がある=観光客が来る」は本当か

 一方で、鉄道の役割のひとつとしてしばしば取り上げられるのが、観光客の輸送。事実、観光列車を走らせることで注目を集めているローカル線もあるし、反対に廃線が観光客減少に直結した事例もある。とはいえ、鉄道の有無と観光客の入り数は必ずしも比例しない。大半の路線が存廃危機に陥っている北海道は、むしろ国内でも有数の観光地。さらに、こちらも観光客が多い沖縄県にはモノレールが1路線あるだけだ。留萌本線留萌~増毛間が廃止され、鉄道でのアクセスができなくなった北海道増毛町でも、「観光客の動向に大きな変化はない」(同町担当者)という。 「むしろ自治体に求められるのは、『鉄道があるから人が来る』ではなく、『鉄道があってもなくても人が来る』魅力ある街づくり。そのうえで、鉄道が地域振興に本当に必要なのかを真摯に考えなければならない。無為に鉄道を維持するため、財政支援をできる余裕のある自治体はほとんどないはずですから」(前出の自治体関係者)  地方の鉄道が苦しい状況に置かれている一方で、新幹線は現在北海道・北陸・九州で建設が進められている。さらに首都圏では相模鉄道とJR・東急線を直通する新線が建設中、大阪でも市内を南北に縦貫するなにわ筋線の計画が具体化している。まさに都市部と地方の格差を象徴している存在が鉄道なのだ。  ともあれ、今後も地方ローカル線の存続が危機的状況にあることには変わりがない。鉄道の旅だからこそ見ることのできる風景、それを楽しむならば今のうちなのかもしれない。 <取材・文/境正雄>
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