ラテンアメリカへの兵器輸出でもその力を伸ばしつつある中国
これはあくまで投資相手国のことであって、貿易取引量はこの序列のようにはならない。しかし、相手国として柱になって来た国はブラジル、ペルー、アルゼンチンの3カ国で、自然資源と農業作物の開発及びその産品の買い付けを基本に発展して来た。また、財政事情の苦しいベネズエラに対しては負債の支払いに原油の中国への輸出で相殺するといった取引も実行している。
米国はラテンアメリカとの関係では貿易取引以外にカギを握っているのは兵器の輸出である。ラテンアメリカの大半の国が米国からの兵器の輸入に依存していた。しかし、これも最近は次第に様相が変わっているのである。
ニカラグアとキューバは旧ソ連の時代からロシアの兵器に依存しているが、ベネズエラでチャベス政権が誕生して彼が反米主義を唱えていた関係から米国からの兵器の輸入に変わる相手として中国とロシアにその目を向けたのである。
2008年にロシアから戦闘機Su-30MKVそして中国からは練習機K-8や空中探索レーダーを購入した。マドゥロ大統領になってからも中国から輸送機、自動推進砲、装甲車などを購入している。
ボリビアは、チェコから戦闘機L-159を購入する予定であったが、それに米国のテクノロジーが搭載されているという理由で米国はその販売に反対した。そこでボリビアは中国からの融資もあって同国から6機のK-8.6を購入するということになった。と同時にヘリコプターZ-9を4機も購入した。
アルゼンチンはクリスチーナ・フェルナンデス大統領の政権時に中国との関係は親密で、2015年には中国から装甲車VN-18を110台を購入することを決めた。更に、1800トン級の哨戒艦OPVを4隻、戦闘機FC-1を18機の購入などで合意が結ばれていた。しかし、2015年12月に米国寄りのマクリ大統領が誕生したことによって、この合意の行方が疑問視されている。実際、マクリは米国から兵器の購入を決めている。
米国のラテンアメリカへの兵器の販売での問題は、米国が最新装備の兵器を提供するのを避けていることである。ラテンアメリカにある米国製の兵器は古い型式のものが主流になっている。中国はその盲点を突くかのように最新兵器でしかもその購入の為の融資も行っている。
融資という兵器の輸入を容易にするこの配慮が功を奏して、2005年に中国から兵器の輸出はゼロであったのが2014年には総額1億3000万ドル(138億円)の兵器を輸出するまでに成長している。(参照:「ZONA MILITAR」)
中国は一般物資の貿易取引以外に、米国がこれまで支配していた兵器の販売にも中国は次第に影響力を持つようになりつつある。特に、トランプ大統領の政権が続く限りラテンアメリカでのその可能性は強い。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
「兵器市場」としてのラテンアメリカにおける覇権争い
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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