安倍夫妻によって国家はどこまで壊されるのか――福島のぶゆき×菅野完対談

本来の決裁文書管理とは?

菅野 ところで福島さんはもともと経済産業省の役人でしたからうかがいますが、決裁文書というものは、あんな粗雑な扱いをされるものではないですよね?
福島のぶゆき氏

1970年茨城県生まれ。通商産業省(現:経済産業省)を経て2003年に民主党から衆議院議員選挙に出馬。2009年に衆議院議員に。2017年、10月の第48回衆議院議員総選挙では希望の党から茨城1区で出馬するも惜しくも落選。

福島 役所に入所してまず言われるのは、決裁文書は一言一句正確に書かないといけないということです。誤字は一字たりとも許されません。私が若い頃の話ですが、意地悪な上司ですと、打ち間違いがあると、私の机に決裁書の案がそのまま黙っておいてあるのです。誤字を直しても別の誤字を見つけられて何度も返ってくる。どこが間違っているかは教えてくれないのです。私の同期は、誤字のある決裁書をそのまま窓から外にぽんと捨てられてしまった。唖然としていたら、「お前、ゴミはちゃんと拾いに行かないといけないんじゃないか」と拾いに行かされていました。それくらい厳しくて絶対に間違いがあってはいけない。仮に決裁の途中で内容を修正するようなことになったら、もう一度、起案をし直し、最初から決裁取り直しです。それが役所のルールです。一回決裁がおりた文書は、私たちの役所は局ごとに厳格に管理されていました。管理簿があって、勝手に引き出して修正するなんて絶対できません。文書もホチキスで留めるのではなく、こよりで留めて縛ってあるのです。 菅野 一回解くと解いたことがわかるように? 福島 そうです。本当に厳格に管理されている。それは決裁文書が行政の命であって、国家そのものだからです。決裁文書の重なりが国家の歴史であるわけですから、それを改ざんするなどあり得ない話です。昔は天皇陛下の官吏でしたから、その時代からしたら天皇陛下に対して弓を引いたことになる。これは切腹では済まされないことですよ。 菅野 局長というと、昔の勅任官ですからね。勅任官のハンコを改ざんするということは、天皇陛下に対して弓を引くのとまったく同じことです。決裁文書の重なりが国家の歴史とすると、今回の事件は、国家そのものを改ざんしたという話になりますよね。 福島 そうです。クーデターです。革命を起こしたのと同じことです。だからそれほどの大きなことを、誰がなぜやったのか、考えなければいけない。官庁の中の官庁である財務省がやることはあり得ません。 菅野 しかしいま政府は、佐川理財局長の答弁に齟齬が発生したので改ざんしたと言っている。それで利得を受けるのは佐川さんだけじゃないですか。政府の言い訳をそのまま額面通り受け止めるなら、財務省は、理財局長の首を守るためにやったということになるわけですよね? 一年で交代する首を守るためにそんなことをやったなんてあり得ないですよね? 福島 あり得ないです。やったことと守るものの差がこんなにあるなんて。 菅野 強盗が怖いからコンビニ店が核武装するみたいな話ですよね。そんなことあり得ない。だけどそのウソが重ねられていく。これはちょっともう一遍、国会やり直しというような事態だと私は思うのですが。しかしなぜそんな文書改ざんのような大変なことをしてしまったのか。考えれば考えるほど、やはり福島さんが引き出したあの総理答弁につながってしまう。 福島 そうなんです。ただ、安倍総理が何を守ろうとしているのかが、私はいまだにわからない。いまだにわからないんですよ。私は安倍総理が直接なにか影響を及ぼしたとは思っていません。ただ、奥様の昭恵夫人は、名誉校長で森友学園の内部の人ですから明確に関わっています。谷査恵子さんのFAXを見ても、さまざまなやり取りがあったことは明らかですし、決裁文書の中にも出てきました。しかしなぜ総理がそこまで昭恵さんの罪を認めたがらないのか。なぜ安倍昭恵さんを国会に出すのをあれだけ拒むのか。国会まで来なくても、メディアの前で昭恵さん自らの声で釈明したり説明したりしないのか。それがまったく理解できません。特殊な夫婦によって、この国がメチャクチャにされているという、お笑いにもならない日本の姿をどう受け止めればいいのか、よくわかりませんけれども。

「マル政」案件

菅野 この事件の場合は、安倍夫妻も籠池夫妻も両方共の夫婦がちょっとヘンですからね。文書の話に戻ると、私は役人の経験はもちろんなくて、サラリーマンの経験しかないのですが、稟議書・決裁書をあげるときに、サラリーマンだとしても「本件の特殊性」という言葉を使うはずがないんですよね。それで決裁が通るはずがない。特殊な案件を通そうとした場合、根回しが完全に終わっているか、あるいは上から押し付けられたもの、そのどちらかしかないと思う。でも、その言葉がいま残っているわけじゃないですか。役人の真実としては、なぜあんな特殊な文言を残してしまったのでしょうか。 福島 それは、本来やってはいけないことをやっている意識があるからです。よく役所で“マル政案件”といわれるものがあります。そういう案件をいかにスマートに処理するかが、役人が出世できるかどうかの分かれ道なんです。それを杓子定規に、できません、と小役人のようなことを言うやつは出世できない。違法なことをやれば捕まります。なら違法ではない方法でどうやるか。私も国会で何度も議論しましたが、確かに法令違反はありません。佐川さんや麻生大臣が何度も答弁しているように、法令違反はないけれど、法令の例外規定を全部つなぎ合わせているわけです。それでストーリーを完成させる。まさにマル政案件で、誰かに言われたものを合法的に処理する知恵を考え、誰かが動いた。それは官僚以外あり得ません。しかもそれは現場の官僚ではない。自殺されたようなノンキャリの人ではなくて、キャリアのかなりできる官僚です。権限も持っているし、能力もあり、政治的にも振る舞える人です。 菅野 となると局長クラス以上? 福島 そうですね。局長クラス以上でないとできないことです。あとは官邸にいる官僚たちです。 菅野 いまは公人ですからバイネームで言うと今井尚哉首相秘書官であるとか。 福島 そうです。谷査恵子さんのようなノンキャリの人では権力も権限もありませんから、ここまでできません。
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