SNSの浸透で「タイの飲食店」が変わっている! 悪評拡散を恐れる店員たち

 そうした状況が近年になり、明らかに変わってきた。理由は、SNSの浸透で声を出す機会が増えたからだ。  タイはSNS、特に「Facebook」と「LINE」の利用率は日本以上だ。中国製の安い機器が手に入るので、誰でも手にする時代になった。それこそスラム街の住民でさえスマートフォンを片手に遊んでいる風景は当たり前になっている。また、無料Wi-Fi設置がかなり自由なので、サービスの一環で無料Wi-Fiを用意する飲食店が多くあり、顧客が快適に過ごせるようにしている。  これにより、これまでは発言しても井戸端会議の戯れ言でしかなかったようなことが注目されるケースもあるし、誰もが不正を告発することができるようになった。かつてのタイは金とコネクションさえあれば人の命でさえどうにかできたが、今は警察署長レベルでももみ消せるのはせいぜい交通違反の罰金くらいとも言われるようになった。それほどSNSの目を気にする社会になった。  すなわち、ボッタクリなどの些細なことでもその積み重ねが評価を落として自分の首を絞めることになるということを、どんなに小さな商いをしている人にも理解されるようになったのである。  タイ国内ではこの5年くらいの間でこういった商売人のマインドが徐々にいい方向に変化してきている。しかし、そんなマインド変化は始まったばかり。ときに「そこは慎重になりすぎでは?」ということも見かけることがある。

タイで「撮影禁止」の店が激増

 例えば最近は店内や料理の撮影は禁止という店をたまに見かけるようになった。企業秘密が詰まっているならともかく、ごく普通の料理でさえも嫌がられることがある。これはSNSの悪評の方を気にしすぎてしまっている結果だと筆者は見ている。  筆者の経験上では撮影拒否される場合、マネージャーや店員から言われることが多い。オーナーが拒否をすることは案外少ない。あるとすればなにかポリシーが元々あるからというくらいで、ほとんどのオーナーは「どうぞどうぞ」と喜んでくれる。  そして、店員などが拒否するときに必ず言うのが「責任者に許可を取ってください」ということだ。昔ならカメラを店内に向けたら「私も撮って!」というかわいらしいことを言う店員が多かったが、今は時代が変わった。雇われる身であってもちゃんと責任感を持って仕事をしているとも取れる。これはSNSの発達のいい効果の方の現れで、根本的な考え方が本当に変わってきた証拠でもある。

タイの代用コーヒー、オーリアン。こういった撮影を嫌がる屋台がたまにある

 一方で、その責任感から料理の写真を撮らせないというスタンスになっていることがあるのだ。ある食堂で拒否をされた際にその店員に訊いてみた。最初は「悪いことを書かれたら困る」と言っていたが、最後に本音が漏れた。 「だって、もしオーナーに勝手に許可したと疑われたら解雇されますし」
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炎上に巻き込まれたくない店員
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