中国で伸びる「エレベーター内広告」。日本でも成功するか?

Suwin / PIXTA(ピクスタ)

 2月27日、エレベーター保守・メンテナンスなど、エレベーター・エスカレーターの保守・点検を行うジャパンエレベーターサービスホールディングスは、INFORICHという企業に出資することを発表した。(参照:株式会社 INFORICH への出資に関するお知らせ)  INFORICH は、O2Oマーケティングサービス、SNSコンサルティング、デジタルサイネージ、インバウンドSNS運用などを主な事業とする2015年設立のベンチャー企業である。SNSを使ってシェアされる写真を通して様々な体験を提供するPICSPOTというソーシャルメディアサービスで、Redbull Air Race 2017、Tokyo Girls Collection 2017をはじめとする数々の実績が知られている。  ジャパンエレベーターサービスは、INFORICH 社との協働で、エレベーターのかご内で動画広告を配信する事業を行う計画である。機器開発および広告主へのリーチに強みを 持つ INFORICH 社と、4万台以上のメンテナンス先を有するジャパンエレベーターサービスが協力し、エレベーター内動画広告事業を展開していくとしている。

中国では成功していたエレベーター内広告

 エレベーター内動画広告事業にビジネス拡大の可能性はあるのか? 成功事例はあるのだろうか?  中国には、フォーカスメディア社(Focus Media、分众传媒)という2003年設立の広告会社がある。かつては、ソフトバンクやゴールドマンサックスも出資し、2005年にNASDAQ上場、その後、NASDAQでは上場廃止したものの、2014年に深セン中小企業板に上場した。  この、フォーカスメディア社は、商業ビルやマンション内のエレベーターや映画館にフォーカスした広告メディア企業である。現在の同社のカバレッジは150都市に150万のターミナルをカバーし、1日の視聴者は2億人に達しているという。(参照:Focus Media finds new value in urban spaces)  中国のオフィスビルやマンションのエレベーター広告(エレベーターホールやエレベータ内)では、ピコ太郎が中国レンタカー企業のCMに出演し、“PPAP”が流れたことがあったようである。  フォーカスメディア社のエレベーター広告のターゲットは、 1)年齢の78%が20歳から50歳まで 2)家族の71%が月収1万元以上(=16万8千円以上) 3)70%が短期大学以上の学位 と、高い購買力を持つ層となっている。  同社によれば、エレベーターポスター広告に関して、ポスターは主にコミュニティのエレベーターに置かれ、エレベーターに乗った人たちは、退屈な時間に広告へ目が行くとしている。また、ターゲットオーディエンスは週に20回以上エレベーターに乗り、1週間に10分以上、エレベーターポスターやエレベーターテレビ広告を視聴する時間を作ると言っている。この時間に、ブランドとオーディエンスの間のより深いコミュニケーションを形成するとしている。  同社は、新しく建設されたビルやマンションのエレベーターに装飾関連の広告を、1平方m当たりのマンションの価格によって、エレベーターの広告をBenzやPOLOで線引きするとか、カルフールから3km以内のターゲットに対してP&G製品プロモーションをエレベーター広告で実施するなどしている。
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日本ではAPAホテルが過去に参入
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