「井手理論」を批判する小沢一郎・自由党共同代表(左)、山本太郎・自由党共同代表(右)
その中で、枝野幸男・立憲民主党代表は慎重な姿勢をとっている。
「井手先生のお考えのうち、いわゆる普遍主義については私も時代にかなった方向性だというふうに思っています。ただし、財政規律を現下の状況で強調し過ぎであって、それは今、心理的消費不況であるというのと、需要不足による不況であるという前提を考えると、その時代状況には合っていないということなので、全面的に賛同できるというわけではありません」(3月1日・立憲民主党定例会見での枝野氏の発言)
さらに、野党の中で表立って「All for All」を批判しているのが自由党だ。山本太郎・自由党共同代表は3月6日の定例会見で次のように批判した。
「概念自体は素晴らしいと思うが、消費税が財源ということ自体が非常に危険だ。ほかにも税の取り道というのはいっぱいある。(中略)財源とすべきものは非常に多様にあるなかで、財源は消費税しかないという考え方のもとでの『All for All』ということになると、逆進性が強い中において、収入が少ない人たちにとっては非常にシンドイ話になっていくだろう」
そして小沢一郎・自由党共同代表も、3月13日の定例会見で次のように語った。
「井手氏の話は、私も1つの考え方としては賛成だ。ただ、(初めは)地方税の5割アップというのを前提にしていた。それが無理とわかれば消費税に財源を求めている。さらに、財政の健全化、財源論を先に来させている。それでは緊縮財政になってしまい、新自由主義と何ら変わりがない」
しかし、野党内では自由党は少数勢力。「All for All」は次第に野党に浸透し始めている。はたして、今後はどうなっていくのか? 安倍政権への対抗軸として野党が打ち出す、新たな経済政策の行方が問われている。
<文・写真/及川健二(日仏共同テレビ局France10支局長)>