駐メキシコ大使も辞任を表明。トランプ政権下で米国大使が赴任していない国は46か国になる

2月にメキシコを訪れたティラーソンとロベルタ・ジェイコブソン駐メキシコ大使 photo/U.S. Government Works

 長く噂されていたティラーソン国務長官の解任が遂に今月発表された。米国務省はトランプ大統領が就任した時から高官の辞任などが相次ぎ、その空いたポストを補うこともなく、不安定なままスタートした国務省である。それに輪をかけるかのように、2018年2月の時点で45か国で米大使が赴任していない状態が続いており、3月1日に辞任を表明し、5月に正式に辞任することになる駐メキシコ米大使ロベルタ・ジェイコブソンを加えると46か国に米大使がいないという状態になる。(参照:「El Nuevo Herald」)  トランプ大統領の外交組織づくりはどうなっているのか? トランプが大統領に就任してからすでに1年が経過しているが、この有様である。  米大使不在の主な国を列記すると、トルコ、ヨルダン、サウジアラビア、エジプト、韓国、オーストラリア、ドイツ、アルゼンチン、バハマ、ベリーズ、ドミニカ、トリニダード・トバゴ、ボリビア、ベネズエラ、キューバといった国々である。  米国で大使として承認されるまでには次のような過程を経過せねばならない。 ◎大統領による大使候補者の人選。 ◎上院外交委員会にて候補者は諮問を受ける。 ◎上院外交委員会で承認されると、上院議会での承認が必要となる。この上院議会での承認が非常に時間がかかる。  そのため、米国で大使が任命されるまでに要する時間は必然的に長くなる。大統領が大使の候補者を選任してから議会で承認を受けるまで少なくとも半年は必要だとされている。  オバマ大統領の政権時に駐シエラレオネ共和国の大使が決まるまで候補者のジョン・フーバーは428日待たねばならなかったという出来事もあった。これが唯一例外ではない。駐グアテマラ大使としてトッド・ロビンソンが承認されるまで100日を要したという。(参照:「BBC」)  トランプ政権下で45か国で米国大使が不在という事態になっている理由には、オバマ前大統領によって政界から任命されていた大使を全員解任したというのが一番の理由だとされている。新任の大使が決まるまで暫定的にオバマ前大統領の政権下で任命された大使が任務を続けることをトランプは拒否したというのである。(参照:「El Nuevo Herald」)  更に問題なのは、トランプ政権は周囲の助けを借りることを拒否してトランプ大統領を囲む少数のグループが全てを取り仕切ろうとする傾向がある。よって、ただでさえ時間がかかる大使の候補者の人選にもさらなる時間を要することになってしまうのだ。  こんな状況について、トランプは大統領選で勝利するとは本人も思っていなかったので、その為の組織づくりも全く出来ていない状態で就任したから、このような事態になっているのだと皮肉った意見もあるほどだ。
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大使不在の弊害は?
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