乗客が一人もいないのに大繁盛の空港? 夢を追う2人の青年のアイデアが大成功

空港建設バブルの残滓の再利用アイデアが大成功

 将来の小型衛星の打ち上げ基地の建設を夢みて土地を探していた大学を出たばかりのラウル・ベルドゥーとラウル・トッレスは、将来この空港から小型衛星を打ち上げるには最適だと考えたのだ。特に、上空は晴天の日が多いのはその為の条件として最適だ。  そして彼らは賢明なことに、夢の実現に至るまでの当面の採算性を考えた。そこで、2人にアイディアとして浮かんだのが空港を飛行機の駐機場にするというプランであった。  つまり、この空港、飛行機の駐機場と修理そして解体を専門にしている空港なのである。  このアイディアが見事に成功して、僅か5年でテルエル空港は現在駐機場、飛行機の解体、パイロット養成の実習場、コマーシャル・スポットの撮影、無人飛行機ドローンの試験場など多目的に利用されるようになったのである。  駐機場として、現在スペインを始め、米国、ロシア、アラブ首長国連邦の飛行機が駐機しているという。その数は80機。250機まで駐機できるスペースをもっている。(参照:「El Independiente」)  駐機料金は一般の空港でのそれと比較して6割安価に収まるという。例えば、昨年1月から3月までの飛行機の離着数は1609本で、その前年同期と比較して631%の伸びだったそうだ。  飛行機はボーイング747、エアーバス330、プライベートジェット、ヘリコプターなどが駐機しているという。航空会社も長期間飛ばす必要のない機材はベースとしている空港で駐機させておくよりもテルエル空港で駐機させておいた方が経済的だということなのである。(参照:「ABC」)  2年前にはロシアから40機の到着があったという。理由はその所有者であった航空会社が倒産して、営業権を失う前に機材をこの空港に持って来たというわけだ。  2月には25台の自動車が到着し、車のコマーシャル・スポットの撮影となったそうだ。  また、解体についても、この先20年で12000機の解体需要がヨーロッパで見込まれており、彼らの仕事はこの先も充分に保障されている。  昨年は作業として4200作業をこなし、今年は5000作業をこなすことが見込まれているという。(参照:「Heraldo」)

人工衛星打ち上げの夢も実現間近に

 いまでは、従業員は200人を数えるまでになり、その内の3分の1はエンジニアだという。また、飛行機の座席の張替え作業の為の職人の需要もある。外部からの訪問客の宿泊でホテル需要もあるほどに成長した。(参照:「El Independiente」)  空港事業の成長に伴い、2人の発案者の夢もついに実現することになるのも間近となっている。ナバラ大学の航空工学の協力も得て、来年小型衛星を打ち上げる予定になっているそうだ。テルエルの上空は常に空が澄み切った日が多く衛生の打ち上げにももってこいの場所だとされている。  乗客相手の商売ではなく、飛行機を相手の商売にするという少し発想を変えただけであった。これからも機材が増える傾向にある中で、駐機場というのはこれから益々必要となってくるのである。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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