ついに東京マラソンもニューヨーク、ボストン、ベルリンなどとともに世界の6大メジャーマラソンの一つにまでなった。ここで大事なのは、世界の大都市で開催されるマラソン大会は単にマラソンエリートの大会であるというだけでなく、大都市の集客ビジネスとしてのイベントだということだ。キーワードは「国際性」だ。
その点で、中でもニューヨークマラソンは別格だ。私もかつて参加したが、海外からの参加者が4割以上で圧倒的に多い。海外からの参加者は単に走ることだけが目的でニューヨークに来るのではない。魅力的な大都市で過ごす楽しみ、観光の楽しみも求めている。
そして世界的なマラソン大会で、人々が楽しむのはマラソン当日だけではない。その前後にアート・フェスティバルや芸術週間も開催され、街全体に高揚感が漂う。このような芸術文化の厚みを持っているのが国際都市の魅力だ。
このように特に海外からの参加者に一日でも長く東京に滞在させる仕掛けづくりが大事なのだ。今回もスタート前に話していたオーストラリアからの参加者たちも「マラソン後、別に他のイベントがないので、すぐに帰国する予定だ」と言っていた。ある意味もったいないことだ。
東京マラソンも徐々に海外からの参加者も増えて今や約13%にまでなっている。直前のマラソン関連イベントも増えてきた。しかし更なる飛躍のためにはマラソンだけでなく、芸術文化イベントも含めた複合的な魅力を活用した集客ビジネスの発想ももっとあってもよい。そのためにはマラソンはマラソン、芸術文化は芸術文化で担当が違うといった縦割り行政も打破すべきだろう。
【細川昌彦】
中部大学特任教授。元・経済産業省。米州課長、中部経済産業局長などを歴任し、自動車輸出など対米通商交渉の最前線に立った。著書に『
メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)
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