止まらぬ韓国の「Metoo」旋風。脱北者に「これが資本主義だ」と言ってセクハラ行為

韓国でも虐げられる脱北者に、安住の地はないのか

「Metoo」に限らず、脱北者の韓国における処遇は決して恵まれたものとはいえない。脱北イコール幸せとも言い切れない現状があるのだ。  北朝鮮からの脱北者の平均月収は141万ウォン(14万円程度)とされ、これは韓国における平均月収のほぼ半額である(2013年、北韓離脱住民支援財団調査)。  ちなみに2014年に韓国統一部とハナ財団が行った調査によれば、脱北者らの週労働時間平均は、韓国人のそれよりも3時間多い。  一方で失業率は、韓国人の4倍との調査結果もある。また脱北者の自殺率は、韓国における自殺率の3倍(2012年、韓国警察庁調査)といわれており、犯罪に巻き込まれる率を示す被犯罪率は韓国平均の4倍だ。  この数字だけを見ても分かるように、「自由」を求め、決死の思いで韓国に渡った脱北者の現実は、北朝鮮の冬よりもはるかに厳しいと言える。  脱北に成功し、韓国で初めて「統一学の博士号」を取得したチュ・スンヒョン氏は、韓国における北朝鮮出身者の現状を次のように語る。 「脱北者は、自分が北朝鮮出身であることを隠そうとする。自分を『(中国系)朝鮮族』であると偽る人も多い。脱北者は雇ってくれないが、朝鮮族なら雇ってくれる」  脱北者の中には、チュ氏のように大学や大学院に通った人がおよそ1800人おり、チュ氏のように博士号などの学位を取得している人も少なからずいる。しかし、北朝鮮における高学歴者も韓国における差別と偏見の例外にはならない。  北朝鮮出身の教師はレストランの調理補助に、研究者出身の脱北者は引越し業者として日々の生計を立てているという。北朝鮮で医師だった脱北者は、渡韓後、定職に就けず、高層ビルの窓拭きの日雇い労働をしていたがゴンドラから落ち死亡した。北朝鮮の名門大学である金策(キムチェッ)工業大学を卒業し、韓国の大学の経営学科を卒業した脱北者も就職に失敗し自殺した。  チュ氏は、ハンギョレ新聞の取材に対し「脱北者たちが韓国社会で経験する事を考えたら絶望感に苛まれる。脱北者に特別な配慮や歓待を求めている訳ではない。経済的な支援もいらない。ただ同等な『国民』として受け入れてくれれば良い。そうなれば、韓国の人々と同じ立場で、自分の能力に合わせて生きていくことが出来る」と答えた。  脱北者の15%は、実は「脱南」もしているのだ。彼らは幾たびもなぜ国境を越えるのか。 「『自由』のためです。彼らが求める自由とは、単純に抑圧されない自由だけではなく、自尊心と自負心を共有し、それを守るために努力が出来る場所のことも指している」  朝鮮半島における南北融和の流れは、脱北者らにとっての光になるのか。もしくは更に暗い影になるのか。  北朝鮮への急接近によって韓国政府は、アメリカや日本などの周辺諸国との外交課題の解決を迫られると同時に、韓国社会における脱北者問題の解決も迫られることになる。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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