依然として行方が知れぬアルゼンチン海軍潜水艦に絡んで囁かれる不穏な「噂」
引き続き、同報告書によれば、ロシア国防相は事態の深刻さを重く見て、しかも確証を掴みたいとして、ヤンタールが掴んだ確認情報をチリ国防省に伝えたという。そして、チリ海軍はロシア国防省からのこの情報を基に独自の調査を進めたそうだ。この調査の反応を示すかのような出来事が昨年12月13日に起きたのだという。
チリ海軍の中将カート・ハータング、少将ホルヘ・ロドリゲス、少将デイビット・ハーディー、少将エルナン・ミリェール、少将マリオ・モンテッホの5人が退役したというのである。この5人の将校の退任というのが、この事件と直接関係しているという実証は外部からでは分からない。しかし、一度に5人の将校が退任するというのは尋常ではない。
更に、トランプ大統領を愕然とさせることがプーチンより伝えられたとも書かれている。ARAサンフアンを起爆させたのはAQS-24B Minehuntingシステムであった。これは機雷掃海に使用され、ヘリコプターや哨戒機に搭載されるシステムである。
問題はCIAがチリ海軍に内密にこのシステムを提供していたというのである。しかも、チリ海軍にとってこのシステムはまだ試験的な段階であって、ARAサンフアンを機雷と誤診して起爆させたということをプーチンはトランプに伝えたのである。
ARAサンフアンも一つの機密使命を担っていたという。フォークランドの英軍の動きなどを調査することであった。そのことから、起爆させられた場所に偶然居合わせるということになったのであった。
この様な事態からロシア政府はARAサンフアンが沈んでいる場所は殆ど把握できているという。予測されていた地域よりも、もっと沖合である。しかし、アルゼンチン政府はその調査申請を却下した。船体が見つかって攻撃を受けたという事態が明白になれば国際問題になることを恐れたようだと、この説を信じる人の間では囁かれている。
しかしながら、今のところ、この沖合調査は実施されておらず、ヤンタールによる調査も終了した状態になっている。
マクリ大統領がスイスのダボス会議に出席する前、1月21日にロシアを訪問してプーチン大統領と会談している。しかし、この段階でも、ロシア政府が要請しているARAサンフアンの船体発見の捜査の再開についての進展はなかった。
果たして、マクリ大統領は国際問題に発展することを恐れてこの事件の解明を今後する意向がないのだろうか。確かに、アルゼンチンとチリは犬猿の仲と言われた時代もある。現在、両国の関係は円滑であるが、チリの対潜哨戒艇の誤操作でARAサンフアンを撃沈してしまったということが表沙汰になると、両国の関係は深刻な事態に発展する恐れがある。しかも、それはラテンアメリカ全域に影響するようになるのは必至である。
現在、ラテンアメリカはベネズエラ危機の早急なる解決が急がれている。そのような中で、アルゼンチンとチリが紛争になればラテンアメリカは危機的状態にまで発展する恐れは十分にある。また、CIAが内密に機雷掃海システムをチリに提供していたということも問題になるはずである。もしこの「報告書」が真実だとするならば、かなり大きな国際問題に発展する可能性もあるが、この報告書について、スペインやアルゼンチンの主要紙ではまだ取り上げられていないのもまた現実である。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
マクリ大統領は国際問題発展を恐れている!?
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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