金メダリスト・小平奈緒選手の表情を研究者が分析「尋常ではないプロ意識の高さ」

 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。  本日は、平昌オリンピックで垣間見られた小平奈緒選手の決意とプロ意識を表情・動作分析の世界から推察します。分析に用いた動画はまず下記(①)です。 ⇒【動画】はコチラ https://youtu.be/COl-QmdUPUs

小平選手の笑顔の違和感

 最初、分析動画①を見たとき、私は「ん? なぜだろう?」という違和感を小平選手の表情に抱きました。  ①の2:19では、3人のメダリストが並んでいます。  画面左から銅メダルのカロリナ・エルバノバ選手、金メダルの小平奈緒選手、銀メダルのイ・サンファ選手です。それぞれの表情に注目するとそれぞれに笑顔が見られます。しかし、小平選手の笑顔が理論通りではないのです。  オリンピック会場で観察された表情分析のこれまでの研究結果から、普通、表情を観れば誰がどのメダルを獲得したかわかります。  例えば、銀メダリストと銅メダリスト、どちらがニコニコしていると思いますか?  正解は、銅メダリストです。  銀メダリストは「もう少しで金メダルを獲得できたのに…」という悔しさの方が、競技で世界2位になったという喜びよりも大きい。一方、銅メダリストは「もう少しでメダルを取り損ねた、少なくともメダルは獲得できた!」と考え、3位という順位でも十分に嬉しい。このようなロジックです。  それでは金メダリストは?  もちろん金メダリストは最もニコニコな笑顔になります。したがって、理論通りのニコニコ度合いは、金メダリスト>銅メダリスト>銀メダリスト、ということになります。  映像を観ればおわかりの通り、銀メダルのイ・サンファ選手と銅メダルのカロリナ・エルバノバ選手は理論通りの笑顔です。  それでは金メダリストの小平選手の笑顔はどうでしょうか?  繰り返しますが、普通なら3人の中で最もニコニコの笑顔のハズです。しかし小平選手の笑顔は、口角が少し引き上げられ、軽く口が開けられた程度の弱い幸福表情です。  ①の2:16で小平選手は、「腕が上に引き上げられる」+「頬が引き上げられる」+「口角が引き上げらる」+「唇が上下からプレスされる」動きを見せています。  このコンビネーションは「誇り」感情を意味します。このことから小平選手は金メダル獲得にポジティブな感情を抱いていることはわかります。  それではなぜ3人のメダリストで並んだ時、小平選手は満面の笑みではなく、弱い幸福表情だったのでしょうか?
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金メダルという”相対基準”と自分の中の”絶対基準”
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