携帯電話の製造元であるVertu Corporationが清算しているため、緯図通信貿易(中国)の事業も長期の継続は不可と思うかもしれない。ところが、英国で携帯電話の製造を継続する計画のようだ。中国で販売する携帯電話は製造工場を中国当局に届け出る必要があるが、緯図通信貿易(中国)は2018年1月に製造工場の変更に係る認可を受け、製造工場はVertu CorporationからVertu International Corporationに変更された。
Vertu International Corporationは英国・ハンプシャー州ウィンチェスターで2017年10月4日に設立された企業で、事業内容はVertu Corporationと同じく携帯電話の製造だ。取締役には中国国籍の人物が名を連ねており、緯図通信貿易(中国)が事業を継続するため、英国でVertuブランドの携帯電話の製造を継続する目的で設立したと考えられる。
Vertuブランドの維持と再建に向けた緯図通信貿易(中国)の動きを確認できるが、もちろんある程度の勝算を見込んでいるからだ。
というのも、中国では経済発展に伴う富裕層の増加が顕著で、複数の携帯電話メーカーが富裕層市場の開拓を狙うスマホを販売しているからだ。緯図通信貿易(中国)も中国の富裕層市場に期待をかけ、強力なVertuブランドを活かす狙いがある。
富裕層向けスマホの多くはVertuブランドのそれより安いが、やはり質感やブランド・エクイティなどはVertuブランドに敵わない。Vertu Corporationの清算はVertuブランドに傷をつけたとはいえ、Vertuブランドの代わりになれる超高級携帯電話はなく、中国の質屋でも本物は比較的高価で取引されるように価値は依然として高いのである。
成功する確証はないが、中国で富裕層市場の拡大が期待される中で、Vertuブランドの再起を狙う緯図通信貿易(中国)の動向は要注目である。
「Vertu Signature Touch」の本体が入る箱は高級ブランド品そのもの
<取材・文・撮影/田村和輝>
たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ