<現役愛人が説く経済学22>高級クラブは愛人市場においてはレッドオーシャン

 高級クラブにはキャバクラのような「指名制度」がありませんから、担当ホステス(Aとします)は、自分の席にたくさんのホステスをつけてくださいます。仮に顧客が、A以外のホステスを気に入ったとしても、高級クラブの担当は永久指名制ですから、Aにとっては男性が誰を気に入って来店しようが、売上が継続的に入ってくる仕組みなんですね。  つまり、Aの顧客から気に入られれば、彼女の顧客とアフターしたり、同伴したりすることもありえます。プレゼントをもらうことだってあるのです。  が、他のホステスを見ていますと、Aの顧客に気に入られて金銭的なプレゼントをもらいつつも、遠慮してAに報告するなど、やはり「担当」がいちばん強いような印象を受けました。  私も、彼女の席に何度か呼んでもらい、お客様を紹介していただきました。皆さん、びっくりするほどお金持ちな上に、セクハラもなし、もちろん枕営業など求めてきません。  紳士で優しい方ばかりです。が、どうも愛人契約の営業がしづらいんですね。やはり、ヘルプのホステスから見ると、すでに顧客を持っている担当がもっとも強いんです。  マーケティングにおいて重要なプロセスのひとつは、「競合他社の分析」です。いくらその市場が魅力的でも、競合他社の売上規模や強みを分析せずに参入するのは、海図を持たずに航海へ出るようなもの。市場を牛耳るトップランナーの後塵を拝しておしまいでしょう。  私は銀座のクラブで働いてみて、「ここはレッドオーシャンだ」と感じました。愛人契約を取ろうにも、海千山千の担当ホステスが男を独占しているのです。  お金持ちが最も多く集まる場所であり、女性に対して「精神的満足度」を求める穏やかな紳士が多い銀座のクラブは、それだけに競合他社(他者)があふれるレッドオーシャンだったのです。男性の質が最も高いので、そこにむらがる女性も多いのでした。  そこで次に狙いを定めたのが、高級クラブに通うほどのお金持ちは若干減るものの、精神的、身体的な満足度を求める男性が多い「デートクラブ」です。古くは「愛人バンク」とも呼ばれ、裕福な男性と若い女性をマッチングさせる紹介業のようなところです。ここでの営業活動が、私には最適だったのでございます。 <文・東條才子>
1
2