トップダウンで100やらせるのはNG! チームのパフォーマンス向上に必要な合意形成、最後の締め

100やらせようと強制しても、60のパフォーマンスしか出ない

 この4つの質問による合意形成手法を活用していくためには、メンバーの合意形成を実現したいと思うリーダーの意識を変えなければなりません。言い換えれば、リーダーの意識が変わっていなければ、質問による合意形成は実現できないのです。  意識をどのように変えなければならないかと言うと、リーダーがメンバーにやらせたいことが100あったとして、100やらせようと思わずに、70でやらせようと思うということです。  100やれ、リーダーの言ったやり方のとおりの方法に100従ってやれ、リーダーの指示した話法に100従って実施しろ……というように手取り足取り、トップダウンで100やらせようとして、メンバーは「そうは言っても、できないよな」「無理な命令だよな」「なんで方法や話法に従わなければならないのだ」と内心思いつつ、パフォーマンスが上がらず60の成果しか出ないということが、実に多いのです。

70でスタートしてパフォーマンスを上げる

 一方で、100やらせることにこだわらず、方法に100従わなくてもよい、話法も100踏襲しなくてもよい、4つの質問による合意形成の結果、リソースも補充され利益の出方も変わってきたり、スケジュールも若干変更になったりして、70でスタートするとします。しかし、今度は合意形成されているので、パフォーマンスが上がり、80の成果が出るわけです。  トップダウンで100やらせることにこだわり60の成果しか出ないのと、合意形成によりメンバーを巻き込み70でスタートするけれども80の成果を出すのとどちらが良いのか、ほとんどのリーダーが後者の方が良いと言うに違いないでしょう。それでは、後者の意識になって、合意形成手法を用いればよいのです。  もちろん、法律を遵守しよう、規程を守ろうというような内容に関しては、有無を言わさず、トップダウンで徹底していってよいと思います。メンバーの知恵や工夫を出し合い、実施の仕方はさまざまな方法を取っていける領域に関して、合意形成の手法を用いて、取り組んでいけばよいということなのです。  私が演習を行ったりサポートをしたりしているトヨタグループもサントリーグループも、業績を伸展させている企業や団体では、合意形成手法を多用しています。メンバーを巻き込んで組織の力でパフォーマンスを発揮することがそれだけ重要です。そのためには、組織の力を発揮する具体的で実効性のある手法の活用が不可欠なのです。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第68回】 <文/山口博> 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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チームを動かすファシリテーションのドリル

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