進行役が示唆質問の示唆のあり方を聞く相手は、最も深刻な問題を挙げてくれた人でなくても構いません。他のメンバーの方に聞いてみればなおよいでしょう。そうすることで、ともに問題を解消する気運を盛り立てることができるわけです。
4つの質問による合意形成の方法は、複数名が参加する会議の場面でも、1対1の対話の場面でも活用することができますが、複数名が参加する会議の方が、さまざまな示唆のアイデアを出してくれる可能性が高いからです。
逆に進行役が自ら示唆を繰り出さない方が良い場合さえもあります。参加者に聞いて、参加者が望む方向でまとめていけばよいのです。参加者が答えた解決の方向性が実現不可能なものである場合もあります。その場合は、いくつか解決の方向性を出してもらい、その中から選んでいけばよいのです。
実施できるかどうかの現実性と、参加者が合意できるかどうかという状況との兼ね合いで、どの方策を取るか決めていくのです。
会議の進行役を務めることに抵抗感を覚える人もいるでしょう。できれば、担いたくないと思う人もいらっしゃると思います。しかし、このように、参加者に質問していくだけで、異論や懸念を洗い上げ、掘り下げ、示唆質問は思いつかなければ参加者に質問すればよいという方法であれば、やってみたいとと思わないでしょうか。
とかく会議の進行方法というと、会議メンバーはどう選ぶ、会議の議題はどうする、決められた手順で会議進行し、議決し、議事録をまとめ、それを配布して……というように手順にばかり目がいって、その煩雑さに辟易としてしまうことになりがちです。
そうしているうちに、最も肝心な合意形成がおろそかにされてしまうというような本末転倒なことになりかねません。会議の手順が不要だとは言いませんが、手順に労力を費やすことよりも、4つの質問により合意形成を実現していくことの方がよほど大事で、実は、そのことがビジネスシーンの中でおろそかにされていると言わざるを得ないのです。
次回、示唆質問により問題点の解決の方向性を絞り込んだ後、合意形成を完成させる「まとめの質問」については近日公開予定。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第67回】
<文/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。