「異業種コラボ」に力入れるファミマ、「地方の問題」解決のため手を組んだ相手とは?

 そこで、七ヶ宿町は店舗が出店する土地と建物を無償で整備する「公設民営方式」を採用するとともに、敷地内に町営バスの拠点となる停留所を設置。さらに店舗周辺のまちづくりでは温浴施設や飲食店の設置を計画するなど、店舗にとって安定した集客が望める環境を保証したのだ。

ファミマ+コープには町営バスの乗り換え拠点を設置。バスの行き先も「ファミリーマート七ヶ宿店」と表示されている

 行政のお膳立てもあって、「ファミリーマート+コープ七ヶ宿店」は2017年4月に無事開業する運びとなった。  町民待望の「スーパー」と「コンビニ」両方が一気に誕生したことで、町内の買い物環境は劇的に改善。さらに、店舗には町民の要望で併設されたコインランドリー「洗濯屋工房」(みやぎ生協グループ運営)や、リサイクルステーション、先述したバス停も併設されており、買い物以外のさまざまな面で「町民生活に無くてはならないライフライン」としてその役割を全うしている。  こうした「公設民営方式」によるファミマ一体型店舗の誘致は他の地方でも採用されており、2018年春には福井県南越前町において、町が整備した建物にファミマと福井生協の一体型店舗が出店する予定となっている。

2018年春には福井県南越前町で、ファミマと福井生協の一体型店舗が開業予定。こちらも七ヶ宿町と同じ「公設民営方式」を採用した。(画像はファミリーマート公式サイトより)

「小さな町での成功」は大都市にも

 人口1,500人に満たない七ヶ宿町における一体型店舗の成功は、意外なところへの新規出店にも繋がった。  宮城県の最少自治体・七ヶ宿町の一体型店舗運営でノウハウを得たファミマとみやぎ生協は、2号店となる一体型店舗を東北最大の都市・仙台市へと出店したのだ。  店舗が立地するのは仙台市宮城野区の住宅団地・鶴ヶ谷団地の一角。鶴ヶ谷団地は1960年代に建設が開始され、現在も1万3千人の人口を抱える東北屈指のマンモス団地だ。

東北屈指の規模である鶴ヶ谷団地。新しい団地(左)と古い団地(右)が混在し、若年層から高齢者まで幅広いニーズが存在している

 近年、鶴ヶ谷団地では古くからの住民の高齢化が進む一方で、老朽団地の建て替えで若い世代の入居も進みつつあり、手軽に食べられる「中食」の需要が高まっていた。  しかし、団地内にはコンビニが1店舗も存在しておらず、みやぎ生協とファミマは24時間営業で各種惣菜や日用品などが買える一体型店舗「ファミリーマート+コープ鶴ヶ谷店」を12月13日に開店させるに至ったのだ。

仙台市宮城野区に出店したファミマとみやぎ生協の一体型店舗の2号店。周辺は1万3千人が住むマンモス団地だ

 実は、店舗の目と鼻の先にはみやぎ生協の食品スーパー「コープ鶴ヶ谷店」が既に出店している。しかし、このコープは夜9時半で閉店してしまうため、仙台市中心部で勤務する働き盛り世代が残業や市内で飲食して団地に帰るころには閉店時刻を過ぎており、団地の利便性を大きく損ねる結果となっていた。

団地内にはみやぎ生協の食品スーパーも出店しているが、営業時間が短いため、24時間営業の店舗はニーズが高かった

 新たに出店した24時間営業のファミマ+コープ鶴ヶ谷店は営業時間ではもともとあったコープ鶴ヶ谷店に対して大きく優位に立つものの、全取り扱い商品約2,500点のうち生協の商品は約300点と最低限の商品展開に留まっているためコープ鶴ヶ谷店とは棲み分けを図ることもでき、スーパーの売上を補完する「分店」的な位置付けとなっている。  団地待望の24時間営業店舗は、完成から約50年が経過した老舗マンモス団地へと新たな住民を呼び込むことにも寄与するであろう。  老朽化した農協スーパーの建て替え、買い物困難地域や団地の利便性改善など、その土地ごとに抱える問題を協同組合と共に解決してきたファミリーマート。こうした一体型店舗の展開は、組合員や地域利用者への「相互扶助」を目的に事業を行う協同組合と、「あなたと、コンビに。」を掲げるファミマとの「理念の一致」が生んだものであろう。  続々と生まれる「ファミリーマート+○○」。次はあなたの街にもファミリーマートが仕掛ける「意外なコラボレーション店舗」が姿を見せるかもしれない。 <文/若杉優貴 佐藤 取材・撮影/淡川雄太 佐藤(都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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