「会議とはそもそも異なる意見を戦わせて、議論をする場なのではないか」「会議で議論をしないなんて、とんでもない」「会議では積極的に発言して議論を戦わせましょうと習ってきたし、ものの本には書いてある」……こう感じた読者も少なくないかもしれません。
しかし、片端から議論しようとするから、会議が紛糾して収拾がつかなくなるのです。異論や懸念が出された順に反論していくから、時間切れになるのです。会議が紛糾するのは、やり合って応酬するからです。この方式はいたずらに応酬しないから、紛糾しないのです。その点が従来の会議とは真逆なのです。
では、どのように合意形成していくのかという点は、
洗い上げ質問、掘り下げ質問、示唆質問、まとめの質問の順に繰り出していって合意形成していきます。このとき、異論や懸念の洗い上げが十分に行われたかどうかで、合意形成の確度がかわるほど、最初の洗い上げ質問がこの方式の成否を決めるので、最初の洗い上げ質問は徹底的に行うことが重要になります。
10人の参加者による1時間の会議であれば、20分くらいを洗い上げ質問にあてましょう。30分の会議10分程度を、洗い上げ質問に費やすイメージですね。洗い上げ質問により相手の考え方がわかってきます。そのことが、この後の掘り下げ質問、示唆質問、まとめの質問の効果を高めるのです。
この洗い上げ質問、これまでトップダウンで方針を徹底させようとしてきた人ほど、合意形成の効果が高まる。これまでトップダウンでやってきた人が、その姿勢とは真逆の、「異論や懸念をどんどん出してください」…という相手の意見を求める姿勢を示すからだ。これまで断定して指示してきた人が、質問によってメンバーの意見をくみ取ろうとするからだ。
このような方式なので、冒頭に記したように、進行役は説明される方針について熟知していなくてもよいし、進行役は課のトップでなくてもよいわけです。逆に方針を熟知していなかったり、課のトップでなかったりした方がやりやすいとも言えます。それは、素直に質問できるからです。次回は、掘り下げ質問の仕方を紹介しましょう。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第65回】
<文/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。