1月1日に北朝鮮が新たな人工衛星を打ち上げか? その可能性と目的は? そしていかに脅威なのか?

北朝鮮が2016年に打ち上げた「光明星」ロケット。地球観測衛星「光明星4号」が搭載され、地球を南北に回る軌道への投入に成功した。ただし衛星が機能している様子は確認されていない Image Credit: KCTV

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が近々、新しい人工衛星を打ち上げるのではないか、というニュースが世界を駆け巡っている。  北朝鮮の国営メディアは、「我々には衛星を打ち上げる権利がある」などとする記事を、この12月だけで3回も掲載。また12月はじめには、ロシア新聞が、北朝鮮を訪問したロシアの専門家が「2機の新型衛星の打ち上げ準備をしている」という説明を受けたというニュースを報道。さらに米CNNなどは28日、関係者の話として、北朝鮮が新しい弾道ミサイル、あるいは宇宙ロケットの発射準備と思われる行動をしていると報じている。  はたして衛星打ち上げは本当に試みられるのか。その目的は何なのか。そしてどんな脅威に結びつくのだろうか。

北朝鮮による衛星打ち上げの歩み

 北朝鮮が衛星の打ち上げを行うのはこれが初めてではなく、これまでに少なくとも1998年と2009年、2012年の4月と12月、そして2016年と、合計5回、実際に打ち上げが行われている。  このうち、打ち上げ成功したのは2012年12月と2016年の2回のみで、他は米軍などの観測から、あるいは北朝鮮自ら、失敗と発表されている。  2012年12月に打ち上げられたのは、「銀河3号」(日本などでは「テポドン2号」、あるいは「テポドン2号改」と呼ばれている)ロケットで、地球観測衛星「光明星3号2号機」が、衛星は地球を南北に回る軌道(極軌道)に投入された。これは米軍などが実際に確認し、公式に発表している。  ただ、衛星は故障したか、もしくは最初からただの模型だったようで、電波などを出している形跡はなく、実際に衛星として運用が行われたことは確認されていない。  2016年には、銀河3号の改良型と考えられる「光明星」ロケットで、地球観測衛星「光明星4号」の打ち上げが行われ、前回に続き極軌道への衛星投入には成功したものの、やはり衛星が機能している様子は確認されていない。  衛星を飛ばすためには、地球を回る軌道に入るために、ロケットを正確な姿勢や方角で飛ばす必要がある。しかし、近年のミサイル技術の向上からもわかるように、いまの北朝鮮にとってはそれほど難しいことではない。その一方で、いずれの打ち上げでも衛星が機能している様子はないことから、衛星を開発する技術はまだ未熟だと考えられている。  ちなみに、北朝鮮はロケットの打ち上げそのものが国連安保理決議で禁止されているため、軍事用のミサイルだろうが衛星打ち上げロケットだろうが変わらず、許されるものではない。

北朝鮮が2016年に打ち上げた「光明星」ロケット Image Credit: KCTV

北朝鮮が打ち上げると主張する地球観測衛星と静止衛星

 今月はじめのロシア新聞の報道によると、北朝鮮はロシアの専門家に対し、「近々、100kg級の地球観測衛星と、数トン級の静止通信衛星を打ち上げる」と話したとされる。  地球観測衛星というのは、文字どおり地球をカメラなどで観測する衛星で、多くの場合、極軌道に打ち上げられる。  前述のように、2012年12月と2016年の打ち上げでは、実際にこの極軌道に向かって打ち上げられ、ほぼ狙いどおりの軌道に入ったことが確認されているが、衛星が機能している形跡はない。だが、まともに機能する衛星さえ造れるようになれば、実際に打ち上げて宇宙から地表を撮影することは可能だろう。報道されることを承知の上でロシアの専門家に語ったところからすると、今度の衛星はそれなりの自信作なのかもしれない。  一方、静止通信衛星というのは地球の静止軌道(地球の赤道上空約3万5800kmにある軌道)に打ち上げられる通信衛星のことである。これまで北朝鮮が開発や打ち上げを試みたことはなく、言及されたのも今回が初となる。また数トンの静止衛星というとそれなりに大きな規模だが、これほど大きな衛星の開発も初めてである。  静止軌道に打ち上げられた衛星は、地球の自転と同期して飛ぶため、地球から見ると衛星が、また衛星から見ると地球が静止しているように見える(だから静止軌道と呼ばれている)。こうした特徴から、衛星や地上にあるアンテナの向きなどを固定できるため、数多くの通信衛星の運用軌道として活用されている。  ただ、どちらの衛星も、その具体的な打ち上げ時期や、衛星の性能や外観、また打ち上げにどのようなロケットを使うのかなどは、今のところわかっていない。
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部分軌道爆撃システムに発展する可能性も
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