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多様な人材を積極的に活用しようとする、ダイバーシティの取り組みが加速しない。ダイバーシティは、性別や人種、年齢や学歴などの多様性を受け入れ、広く人材を活用して生産性を高めるマネジメント手法だ。
例えば、男女共同参画の取り組みをみると、政府は2020年までに女性管理職の比率を30%にする目標を掲げているが、厚生労働省の雇用均等基本調査によれば2016年の比率は12.1%にとどまっており、前年比わずか0.2ポイント高まったに過ぎない。
いったいなぜ、加速しないのか。人材開発の関わる演習を繰り返す中で、その原因を分解してみると、どうやら、ダイバーシティの目的と、その目的の掲げ方との間に、不一致感にあるように、私には思えてならない。
どういうことかと言えば、そもそもダイバーシティの目的は、「多様性」を高めることだ。一方、その目的として、「全国一律」に女性管理職占率目標を掲げられている。多様性を高める目標の掲げ方が、一律であること、この不一致感が、取り組みの推進を妨げている。
このように申し上げると、多様性を高める目的であっても、多様性を高める度合を数値化しているので、目標は一律となっていても不自然ではないのではないかという反応が返ってくる。
そのとおりで、目標数値は、その区分ごとに一律で当たり前だ。私が問題視しているのは、その目標を唱えれば唱えるほど、強調すればするほど、その目標をクリアしているか、していないかの判定に労力が割かれる。
目標数値が独り歩きして、その判定が手法と化す。ここまで来ると、「多様性」と「一律」という真逆の概念が、不一致感をもたらし、取り組みのバリアになってしまう。私がサポートしている企業では、こうした事態に陥っているケースが少なくない。
目的と目標数値が、目的と手法の不一致感をもたらす事例は、ダイバーシティだけでなく、さまざまなビジネスシーンでみられる。その顕著な例が、働き方改革の推進だ。
働き方改革で生産性を高めるために、働き方の多様性を実現しようとする。一方、働き方改革実現のための手法として顕著に取り上げられる例が、20時一斉消灯、残業時間の制限といった、一律の規制だ。ここにも「多様性」と「一律」の相反する概念が存在し、その不一致感が、アクションを減速させている。