IT業界とモデル派遣業界というのは、実は古いつながりがある。トレードショーの出展ブースで顧客や来場者の対応をするコンパニオンは、大抵はモデル事務所から派遣されてきた女性たちだ。彼女たちは「ブース・ベイビーズ」と呼ばれて男性たちの視線を集め、人気の高いブース・ベイビーの周りには来場者が集まるため、企業にとってはモデルの雇用が重要になる。そのため複数のモデル事務所と取引関係にあるIT企業も少なくないようだが、ここ数年はトレードショーのモデル派遣という枠を越えて会社主催のパーティにサクラとして参加させるケースが急増し、この冬のパーティではそれが一層目立っているため、ニュースメディアを賑わす話題となったわけだ。
もっとも、モデル事務所の方は、この状況を歓迎しているわけではない。サクラとしてパーティにただ参加するだけの雰囲気モデルを派遣することは極力避けたいというのがモデル事務所経営者の本音であり、派遣するモデルには個人情報を交換しないなどの注意事項を与え、ときには事務所経営者が自らパーティに潜入し、問題が起きないか偵察することもあるという。米国で次々と告発が起きているセクハラ問題はこのIT業界にも及んでおり、それだけに雰囲気モデル雇用の実態に、米国社会は厳しい目を向けている。
<取材・文/水次祥子 Twitter ID:
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みずつぎしょうこ●ニューヨーク大学でジャーナリズムを学び、現在もニューヨークを拠点に取材執筆活動を行う。主な著書に『
格下婚のススメ』(CCCメディアハウス)、『
シンデレラは40歳。~アラフォー世代の結婚の選択~』(扶桑社文庫)、『
野茂、イチローはメジャーで何を見たか』(アドレナライズ)など。(「
水次祥子official site」)