巨額のマネーを生み出す箱根駅伝はもはやビジネスの場。勢力図は今後も移ろうだろう。写真:産経新聞社
箱根駅伝を長年取材する、スポーツライターの酒井政人氏は話す。
「箱根駅伝がここまで国民的行事になった経緯は、昭和62年から日本テレビが完全中継、フル中継をするようになったのが一番大きい。それまでも、テレビ東京がダイジェストで流すような時代はあったが、日テレの生中継を機に爆発的に知名度が上がりました」
毎年1月2日、3日にかけて行われる同レースは、夏の甲子園と並び国内最大の注目を集める学生大会でもある。
’20年に第一回大会が開催されて以来、現在は視聴率25%を超える巨大コンテンツとなったが、意外にも注目度が高まったのは平成に入ってからだ。
それまでは、有名大学のOB達が自校を応援する、“内輪”の意味合いも強かった。しかし、テレビ中継を機にサッポロビールや、ミズノなどが大会スポンサーに名乗りを上げた。大手広告会社である博報堂も参画し、メディア戦略も向上。日本テレビは運営元の関東学生陸上競技連盟と複数年契約を結び、更新し続けている。
そんな箱根駅伝が近年、変わりつつある。まずは、勢力図だ。一気に強豪校へ躍り出た青山学院大学を筆頭に、新興校、古豪勢の躍進も目立つ。
「授業料免除+奨学金という形で生徒を獲得する風潮が目立つようになったのもここ数年。今は、いくら良い指導者をつけても大学のネームバリューがないと生徒が来ない。早稲田なんかはいまだにスポーツ推薦の枠は少ないが、名門校でもこの制度を使い生徒を獲得するようになってきています」。
では、学生達に人気のある大学はどこになるのか。
「卒業後の希望企業として人気があるのが、トヨタ、ホンダ、コニカミノルタ、富士通など。それも契約社員としてではなく、正社員としての登用を望んでいる選手が多い。そうなると必然的に駅伝だけではなく、“ブランド+駅伝が強い大学”に人気が集まる。昔は六大学だと、中央大学の一人勝ちだったが、青学、明治など近しいレベルの大学が箱根に力を入れ始めて、よい選手達が集まってきています」