韓国大手企業が導入する働き方改革 「緊急子供ケア」、2時間単位の有給休暇など

求められているのは「短時間労働」ではなく、従来のビジネスモデルの見直しか

 CJグループも多様な休暇制度を導入しており、従業員のワークライフバランスの実現を支援している。  まず5年ごとに最大一ヶ月間、充電とする「休暇」と自分と向き合う時間を持つように「創意休暇」制度を導入している。入社の日を基準に5年ごとに4週間の休暇を取得できる。さらにおどろくべきは、勤続年数によって50万ウォン(約5万円)~500万ウォン(約51万円)のレジャー費用も支給する。  ほかにも、子供を持つ従業員は小学校入学を前後に一ヵ月間、「入学準備休暇」を取得することもできる。  そのうち2週間は有給休暇とし、経済面でもサポートする。また、一時的に緊急で子供の面倒を見なければならない状況が発生した際には、2時間の短縮勤務を申請できるようにする「緊急子どもケア」など、労働時間の短縮制度も新設している。  新世界の今回の発表は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の労働時間短縮公約に真っ先に応える姿勢を示したもので、他の大手企業への影響が注目される。  なお、韓国政府は現在も法的に許容される労働時間を(休日や残業を含め最大)週68時間から週52時間に減らす「労働基準法の改正」を推進しており、まさに働き方改革の真最中である。  しかし一方で、流通業界の労働時間短縮の波が製造業などの産業界全般に拡散される兆しはいまだ見えない。労働時間短縮に伴う生産性の下落や、従業員の所得の減少などに対する財界の懸念事項は依然として存在するためだ。  特に中小企業においては、給料はそのままで勤務時間を短縮するのはほとんど難しい。  中小企業中央会は12日、汝矣島(ヨイド)本部で記者会見を開き、「現在の労働時間短縮案は中小企業にとっては、打撃がとても大きい」と反論した。会見では、人材不足のため、高齢者や外国人労働者ありきの現場で長時間労働が避けられない中小企業の現状や、「30人未満の中小企業に対しては、週当たり8時間の残業を容認する補完策が必要だ」との声も。  また、会見で公開した「労働時間短縮に対する中小企業の意見調査」結果によると、調査対象企業のうち38.7%が「労働時間の短縮は企業環境によって施行されなければならない」と回答した。  「国会と政府が関連現場の実態調査を優先的に実施しながら、法案をまとめるべき」と要求した。  日本でも今年、「働き方改革」の一環として、「プレミアムフライデー」や「ノー残業デー」など、労働時間を短縮する動きが広がりをみせている。  しかし、株式会社モニタスが全国の20~59歳の経営者・正社員・公務員1006名を対象に行った、プレミアムフライデーの実態調査によると、施行から約半年、導入率は10.1%と決して高くない。  従業員が100人未満の会社では、導入している割合は3.3%とさらに低下。もともとは経済波及効果のために導入された制度だったが、これこそまさに「机上の空論」。そもそも、月末の金曜日に早く上がったところで、翌週の月曜日には仕事が数倍になって返ってくるのは目に見えている。  求められているのは、「短時間労働」や「早い時間の帰宅」ではなく、従来の「ビジネスモデルを見直していく」企業の姿勢である。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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