夏野 剛「当たり前のことができないダメ会社はすぐ辞めろ!」vol.2

mac日本経済が回復の兆しを見せ、企業業績も軒並み好調と報じられる一方、海外では『MADE IN JAPAN』は失落。お家芸であったはずの家電分野も海外メーカーにシェアを奪われている。その理由を、NTTドコモ在籍時にi・modeを立ち上げ、年間1兆7000億円の収入に育て上げた男、夏野剛氏は、“当たり前の経営思考”の欠如と説く。そして、日本企業に多く見られるこの“病”の処方箋は「意外とシンプルだ」とも。成長する企業と衰退する企業の違いは? これからの時代に求められるビジネスマンとは?「ニコニコ動画」を黒字化させた男が、その答えを語り尽くす! ⇒vol.1はこちら ――豊富なラインナップがユーザー離れを加速させた例はテレビ以外でも似たような状況がありますね。 夏野:日本のメーカーが作るPCも似たような感じですよね。クラウドの時代(※1)で容量勝負・スペック競争は既に終わっているのに、ラインナップが過多になっている。一方でAppleはラインナップがかなり絞られていて、ノートタイプだと、AirとPro、画面サイズはそれぞれ2種類。そして容量やメモリサイズ別というシンプル構成になっているので、ユーザーは取っ付きやすい。逆に多品種少量生産を長所とするのが日本の自動車メーカーですが、ここでもユーザー不在の経営戦略が起きている。以前、利益2兆円の某自動車メーカーが、ソーラーパネルを搭載し停車中に車内の空気を循環させる素晴らしい機能の車を販売したので、革張りシートで注文したら「そのオプションはできない」と。いわく「値段が高くなりすぎるから」と一蹴されました。長所を自ら潰してしまっているんです。 ――供給側のユーザー目線が欠如した例はほかにありますか? 夏野:サービスでもまったく同じことが言えますよね。例えば、銀行はいまだに営業時間が15時までと、ユーザーニーズに応えようとしていない。もちろん、銀行は規制産業なのですぐに潰れることはないでしょうが、少なくとも将来的な成長は見込めません。最近になって使いやすくなった日本の航空会社のウェブサイトも、90年代はユナイテッド航空などと比べて遅れていた(※2)んです。それは、JALとANAが横を見合っていたから。業界を意識している日本の企業の特徴ですね。自分たちの価値を出すのではなく、業界のトレンドを意識して引けをとらないようにしている。反対に、海外は「対価を払うのはお客さんであり、ライバル企業ではない」ということを理解している企業が多い印象ですね。 (※1)クラウドの時代 今後はスマートフォンやタブレット、PCなど多様化する端末への対応を目的として、インターネット環境を利用しデータやソフトをネットワーク上に保存するクラウドサービスが主流になるとも。「Dropbox」や「iCloud」、「GoogleDocs」もその一つで、有料プランであっても格安で利用できる (※2)ユナイテッド航空などと比べて遅れていた 現在では簡単に航空券の予約ができる航空会社のWEBページ。しかし、ANAの場合、初期段階ではオンライン予約どころか空席照会すらできなかった ●夏野 剛 著『「当たり前」の戦略思考』(扶桑社刊 1300円+税) 「アマゾンvs楽天」という構図は間違い!? AppleやLINE、ドコモなど有名企業のビジネスを徹底分析。「勝つためのビジネス思考法」をインプットできるビジネスマンのバイブル的一冊 ― 夏野 剛「当たり前のこと」ができないダメ会社はすぐ辞めろ!【2】 ―
「当たり前」の戦略思考

もはや多くの大企業は「当たり前」の戦略すら立てられていない――

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