無資格者に完成品の検査をさせていた日産の問題も同様に深刻です。西川広人社長は問題発覚から3日後に「検査そのものは確実に行われていた」と安全性への影響を否定しましたが、その発言が問題意識の薄さを如実に示しています。ロクな調査もせずに、「無資格者でも安全性は担保できる」と言っているようなものです。だから、神戸製鋼所と同様に、“余罪”が次々と明るみに出てきました。
【日産自動車】無資格検査問題に関する報告書を国交省に提出する日産の西川広人社長。今期中に85人の検査員を補充予定だ。 写真/産経新聞社
問題発覚後も一部工場では無資格者による検査を続けていたほか、そもそも検査の訓練も受けていない従業員が検査に携わっていたことも後に明らかになりました。完成検査員の試験でも答えを見せて合格させる不正が横行していたのですから、「安全性には問題ない」という西川社長の言葉の薄っぺらさがわかるというもの。このような日産の体質は会見に臨む姿勢にもにじみ出ていました。最初の会見では驚くことに西川社長一人が出席し、現場の責任者も広報も同席しなかったのです。不祥事を起こした日本の企業としては、考えられない対応です。
私は’17年3月まで続いたカルロス・ゴーン体制の弊害と考えています。なにしろ、西川社長はゴーン氏やルノーに対して最も忠誠の厚いとされる人物。無資格者による完成検査はゴーン氏が日産の経営再建に着手した’00年以前から横行していた問題ではありますが、効率を重視したゴーン流の経営が不正に対する意識のさらなる低下を招いたことは疑いようもありません。
今回は250億円かけてリコールすれば禊が済んでしまいそうですが、もはや「日本メーカー=高品質」のイメージは根底から覆されたと考えたほうがいいでしょう。
【闇株新聞】
国内大手証券でトレーディングや私募ファイナンスのアレンジを手掛けた後、独立。’10 年にブログ「闇株新聞」を創刊。オリンパス事件等に関して、いち早く真相を解き明かして話題に。’12年から有料メルマガも配信中。
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