雄々しく舞い上がるファルコン・ヘヴィの想像図 Image Credit: SpaceX
宇宙開発史上最もくだらないミッション、ただし批判も
とはいえ、もちろん批判の声もある。
たとえば太陽物理学者として有名なIan O’Neill氏は、「なにか別のアイディアはなかったのか。もっと価値のあること――たとえば科学観測機器や超小型衛星を載せたり、そのプロジェクトに学生を参加させたり。ロードスターもチャリティに出品したほうが役に立つのでは」と苦言を呈している。
火星にものを打ち上げられる機会が限られている以上、たとえ失敗する可能性があったとしても、記念碑にしかならないロードスターを打ち上げるよりは、科学的に意味のある探査機を打ち上げたり学生に経験を積ませたりするほうが有益だ、という主張は一理ある。
また、マスク氏がロードスターを打ち上げるというアイディアを思いついたのは、おそらく昨日今日のことではなく、準備に必要な期間や、これまでの発言の流れを考えれば、少なくとも年単位の時間がかかっているはずである。その分の時間とお金、労力を使えば、O’Neill氏が言うように、火星を探査できる衛星を造ったり、そのプロジェクトに学生を参加させたりすることはできたはずである。
もっとも、マスク氏は「ロードスター“しか”打ち上げない」と言っているわけではない。ロードスターは重りとして載せるとしても、他になんらかの機器を搭載する可能性は否定できない。ちなみにこの点についても、スペースXに取材したが、ノーコメントだった。
はたして、本当にロードスターは宇宙に行くのだろうか、そこにはなにが積まれ、そして宇宙や火星の近くでなにをするのか。
その答えがわかるファルコン・ヘヴィの初打ち上げは、12月6日現在、年明け早々の1月以降に行われる予定である。
発射台で打ち上げを待つファルコン・ヘヴィの想像図 Image Credit: SpaceX
<取材・文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・Elon Muskさんのツイート: “Payload will be my midnight cherry Tesla Roadster playing Space Oddity. Destination is Mars orbit. Will be in deep space for a billion years… https://t.co/clunBATxJr”(
https://twitter.com/elonmusk/status/936782477502246912)
・Elon Muskさんのツイート: “Falcon Heavy to launch next month from Apollo 11 pad at the Cape. Will have double thrust of next largest rocket. Guaranteed to be exciting,… https://t.co/oaQGB9rzEG”(
https://twitter.com/elonmusk/status/936781265675599873)
・Falcon Heavy | SpaceX(
http://www.spacex.com/falcon-heavy)
・SpaceX will attempt to launch a red Tesla to the red planet [Updated] | Ars Technica(
https://arstechnica.com/science/2017/12/with-bowie-playing-on-the-radio-elon-musk-plans-to-launch-his-tesla-to-mars/)
・Tesla – Roadster | www.teslamotors.com(
https://web.archive.org/web/20100707010237/http://www.teslamotors.com:80/roadster/)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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