ベネズエラは、米国が主導する金融制裁によって、厳しい財政事情を迫られている。ペトロを導入することで、「国の通貨の尊厳を取り戻すことが出来て、金融取引を容易にし、制裁を克服できるようになる」とマドゥロは主張している。(参照:「
La Patilla」)
しかし、マドゥロは自国がまさに困窮した経済状況にあることを忘れている。仮想通貨であっても、ペトロは国家が運営するとしている以上、現在のベネズエラが置かれている財政事情に目をつぶってベネズエラとペトロで取引しようとする国は皆無であろう。
しかも、べネズエラ国内でペトロを普及させようとしても物品も何もかもが不足している中で何を取引しようというのだろう。そのうえ、仮想通貨の普及に必要なインターネットを利用している国民は人口の3分の1だというのだ!
この様な事情下にあるベネズエラで仮想通貨を導入することなど夢物語である。今回のマドゥロ大統領によるペトロの導入は、あくまで米国からの制裁で国家が如何に困窮しているかということを示すアピールであり、そこから国家を救出する為に彼の理想を飽くまで口にしたまでのことなのではないだろうか。
<文/白石和幸 photo by
Eneas De Troya via flickr(CC BY 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身