「タイのメッシ」は日本でも通用するか?ランコ・ポポヴィッチを直撃した

伊達ではなかった「タイのメッシ」の実力

「端的にいえば、イエナガ・プロブレムだな。大宮の監督が家長抜きの新チームを作り切れなかったんだろうね」 「イエナガって誰だ?」同席していた二十年来の親友で、側近のコーチを務めるブラード・グルイッチが問いただす。 「アキ・イエナガだよ。筆者が大分で監督した時にいた選手で、今年は川崎に移籍したからな」ポポが説明する。 「それよりも、大宮が勝ち点1だの、イエナガが川崎に移籍しただの、タイの片田舎にいるのによく知ってるね。どうやって情報収集してるわけ?」筆者が聞いた。 「まあ、今はブリーラムの監督だから全試合見ることはできないよ。でも、長年筆者の通訳をしてくれたツカダとは今も毎週のように話すし、ほかにも町田のスタッフからもいろいろ聞くしな。筆者はいつもスペインと日本は注意して見ているよ」  タイのサッカーといえば、忘れてはならないのは「タイのメッシ」チャナティップ・ソングラシンである。  ブリーラムの永遠の宿敵・ムアントン所属で七月からコンサドーレ札幌に加入した。当初、「タイのメッシ」と聞いて鼻で笑っていた筆者だが、この対話の数日前に、バンコク郊外にあるムアントンの本拠地・SCGスタジアムで行われたACLの対ブリズベン・ロアー戦でチャナティップがドリブルで三人を抜き去って華麗なゴールを決めたのを筆者は目撃していた。「タイのメッシ」は伊達ではなかった。 「ブリーラムはチャナティップと対戦したんでしょ。日本で通用すると思う?」筆者は聞いた。 「実力はあるね。チャナティップに限らず、タイには日本でも通用するレベルの選手はほかにもいる。ただ、初めての外国暮らしは辛いものなんだよ。新しいクラブ、新しい街、新しい環境に馴染むのは生半可ではない。時間さえ与えられれば日本でも活躍できると思うよ」 「サラゴサに連れて行ったアーリアもそうだったもんな」  ここで言う“アーリア”とは、言うまでもなくセレッソ大阪から彼がレアル・サラゴサに引き抜いた長谷川アーリアジャスール選手(現大宮アルディージャ)のことである。 「アーリアだけじゃない。全員だよ。誰でも初めての外国は苦しい。今までずっと快適に暮らしていた国を離れてゼロから人生を新しく始めるのだから、時間を与えてあげないとな。ヨーロッパの方がよそ者を受け入れるという点では上だと思うが、日本に馴染むにはある意味で欧州より時間がかかる。お前ならわかるだろ?」  筆者はここ数年歯科治療を主目的として年に二回はバンコクを訪れている。その際にさまざまな日本人をはじめとするサッカー選手と会食してタイプレミアリーグの試合を視察するのが常となっている。  「タイのメッシ」はACL、つまり国際舞台でも結果を出す力は持っている。今後要注目である。  その後もポポはあのサラゴサでの大逆転劇について、日本時代について、そしてあの超大物選手との真相について、滔々と語り続けた。次回も乞うご期待。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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