持っているとギャンブラー扱い!?の2ドル紙幣(筆者撮影)
(2) 2ドル札
流通量が極端に少なく、なかなか手に入らないため、外国人にはあまり知られていないが、アメリカ紙幣には「2ドル札」が存在する。
多く出回らない理由には諸説あるが、「昔、賭博での標準的な掛け金が2ドルだったことから、2ドル札を持っているとギャンブル好きだと勘違いされた」「売春行為にかかる費用が2ドルだった」「政治家への賄賂に2ドル紙幣が使われていた」など、この紙幣を持っていると何かと疑われやすかったことがあるようだ。
こうした背景から、アメリカには「2ドル札のように疑わしい(Doubtful as Double)」なる言葉も古くから存在する。
結果、「2ドルを持っているとツキが悪くなる」と信じられるようになったのだが、これまた日本では逆にバチが当たりそうな話、「札の端をちぎると厄除けになる」などの迷信あるため、たまたま回ってきた2ドル札に四隅がないという話もしばしば。最近では、そのレア感から「幸運の紙幣」と都合よく解釈が変わりつつある。
(3) 25セント硬貨
50州ごとにデザインの異なる25セントをはめ込む地図
硬貨にも、日本にはない特徴がある。その代表ともいうべきが、25セント硬貨だろう。4分の1という区切りは日本人にとって馴染みがないが、現地では最も使われる硬貨で、25セント硬貨にしか対応していない自動販売機も多い。
実はこの25セント硬貨には、従来の「ワシ」デザインのものとは別に、延べ50種類ものデザイン硬貨が流通している。
1999年から2008年にかけて実施された「50州25セント硬貨プログラム」なる取り組みにより、合衆国への加入が早かった順で各州の硬貨が発行されたためだ(後に準州のグアムや自治領の北マリアナ諸島などの硬貨が加えられ、実際は50種類以上ある)。アメリカには、このプログラムのコインコレクターが数多くおり、各硬貨をはめ込む専用の地図も多く販売されている。
買い物の度に溜まっていくコインに存在意義を見出すため、筆者も2年前から地道に50種類を集めているが、なぜかどれだけ待ってもアラバマ州とアーカンソー州、ハワイ州が回ってこない。
ちなみに、現在は新プログラムとして「国立公園バージョン」が実施中で、2010年から2021年まで毎年5種類ずつ新しい硬貨が誕生している。
アメリカのコインについて特筆すべき点がもう1つある。レジでの会計時、端数のコインに対する勘定が大雑把になされることが頻繁にあるのだ。
例えば、買い物の合計が10ドル2セントの場合、2セントを「いらない」とする店員が驚くほど多く存在する。
とりわけ、客でごった返す朝やランチ時のデリでは「コインはいいから早くどけ」と言わんばかりに、レジの回転を優先にするのだ。
その一方、9ドル98セントの買い物で10ドルを渡すと、釣りをもらうために出した手が、見事に宙を泳ぐことになる。
カード社会らしい習慣だが、筆者がこうして宙をひと泳ぎした手で店員を呼び止め受け取った小銭は、2年間で合計約300ドル(3万円)。塵も積もれば、である。
各国の通貨には、その国の文化や歴史、技術力が凝縮されている。アメリカや都市伝説などに限らず、海外旅行をする際は、名所とともに通貨についても調べてみると面白い発見があるかもしれない。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。その傍ら日本語教育やセミナーを通じて、60か国3,500人以上の外国人駐在員や留学生と交流を持つ。ニューヨーク在住。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
@AikiHashimoto