さらに、「すでに事業承継を終えている」と回答した企業に対して、事業承継が行われた翌年度および5年後に、事業継承が自社の業績にどのような影響を与えたかを尋ねたところ、翌年度に「プラスの影響があった」は26.0%でしたが、5年後になると、プラスの影響は30.8%にまで上昇していることがわかりました。
また、「マイナスの影響があった」との回答は、翌年度から5年後で4.4ポイント減少し、4.9%に低下。「影響はなかった」と回答した企業が、翌年度は55.9%と最多だったのに対し、5年後には36.8%と19.1ポイントも低下していました。
企業にとって事業継承は、少なくとも5年以内に何らかの効果をもたらしているようです。
最後に、「事業承継を円滑に行うために必要なことは?」という質問では、主に以下の結果になりました(複数回答可)。
現代表(社長)と後継候補者との意識の共有……60.4%
早期・計画的な事業承継の準備……46.3%
経営状況・課題を正しく認識……45.7%
早めに後継者を決定……42.7%
円滑に事業承継を進めるためには、正確に経営状況を理解し、経営に関する意識の入念なすり合わせを行うことが大切だと考える企業が多いようです。
今回の調査結果について、帝国データバンクの担当者は「事業承継を経営上の問題として認識している企業が7割を超えることが明らかとなった」と述べ、さらに次のようにも付け加えています。
「一方で、事業承継の計画を進めている企業は2割程度にとどまっていることも浮き彫りとなった。計画を有しつつも、まだ進めていない企業も5社に1社。事業承継を実施した翌年度の自社業績に対して企業の26.0%がプラスの影響があったと考えられており、マイナスの影響を大きく上回っている」
では、なぜ事業継承は日本において進まないのでしょうか?
「(今回のアンケートでは)同時に『非上場株式の贈与・相続に関する税制の根本的見直し』など、税制が事業承継における壁になっているという意見も多く寄せられた。日本経済は多数の中小企業によって支えられているが、技術やノウハウの継承が進まず事業を廃する決断を迫られるケースも多い」(帝国データバンク)
冒頭で挙げた日本電産の例に限らず、さまざまな企業が頭を悩ます事業承継の問題。しかしながら、日本経済の成長においてこの問題は避けて通れません。その重要性は今後ますます高まっていくことでしょう。
<文/ハセベサチコ>
※出典「
事業承継に関する企業の意識調査」(
帝国データバンク)