浅薄な分析をするのは、国民からのツッコミ待ちをするためか
こうしたネットの反応は、主に3種類に分けられる。
(1)カネがないから外出できないんだよ!
(2)労働時間が長いから、休日くらい寝ていたいんだけど
(3)てか、こんなデータに意味あんの?
これである。
(1)(2)は、国土交通省の分析で「若者はインターネットやスマートフォンがある上、車離れの傾向があるから外出しなくなった」とされていることへの反発だ。「違うだろーーーーッ!!!」ってやつである。
お偉いさんたちはすぐネットのせいにしたがるけど、実際はネットってリアルとかなりの割合で融合している。ネットで検索した飲食店に行くくらいは皆やっているし、LINEで連絡を取り合って遊びに行くのもそう。ネットがリアルを支えてる。
だから、「ネットがあるから外出しない」というのは大間違いで、実際は「ネットがあるからこそ外の世界とつながれる上、知り合いもできるので、外出したい気持ちはそれなりにある」んだけど、先立つものがなくて……というのが多くの若者のホンネだろう。
そのあたりに配慮して、「低賃金やサービス残業の跋扈で、疲弊した若者たちは外出する気力をなくしたのであ~る! まあ無理やり外出しなくたっていいけど、政府としては、若者や低所得者限定の『ベーシック・インカム』の導入、待ったなしである!」くらい言ってくれなきゃねぇ。
こういう浅い分析をやってしまうから、(3)で、こんなデータに意味あんの? と言われてしまうんですよ。省庁の「報道発表資料」って、毎回こんな扱いを受けていますよね。「で、だから?」とか、「意味あんの?」とか。
ハッ! もしかすると官僚の皆さんは、自分たちがバカにされることで、国民の「ガス抜き」をしようとしているんじゃなかろうか。
「ほら、僕たちはこんな浅い分析しかできないんです!」と、犬がお腹を見せるがごとく「負け」のポーズを取り、国民にバカにされてあげるのだ。
そうすれば他の大きな問題に目がいかなくなって……ゴニョゴニョ。まさかね。お役人がそんなに考えているとも思えないし、陰謀論にすぎましたが、私にはそれくらい国交省の皆さんが何を考えているのか分からない。
ちなみに資料では、この30年間、日本人の外出率はおおむね下がり続けている。若者にその傾向が顕著というだけで、彼らを叩けばいい話ではもちろんない。ここだけは強調しておきたいです。
<文・北条かや>
【北条かや】石川県出身。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学部研究科修士課程修了。自らのキャバクラ勤務経験をもとにした初著書『
キャバ嬢の社会学』(星海社新書)で注目される。以後、執筆活動からTOKYO MX『モーニングCROSS』などのメディア出演まで、幅広く活躍。著書は『
整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)、『
本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)、『
こじらせ女子の日常』(宝島社)。最新刊は『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)。
公式ブログは「
コスプレで女やってますけど」