ワンコも人間を意のままに操るため、微表情を駆使していた!?
こんにちは。微表情研究者の清水建二です。
本日は私たち人間の表情のスピンオフとして、犬の表情の研究について紹介したいと思います。
人間の表情とその他の哺乳類の表情との類似性を最初に提唱したのは、かのチャールズ・ダーウィンです。例えば、私たちが笑うとき、怒るとき、驚くとき、そうしたときの表情とチンパンジー、犬、猫たちがする様々な顔の動き、とても似ていると感じることがありませんでしょうか?
感情とそれに伴い生じる表情は、自己の環境に適切に順応し、生き残るために必要な適応システムだと考えられています。そうであるならば、人間と遺伝的に近いチンパンジーが人間と類似の感情と表情との関係性を持っていても何ら不思議ではありません。同様に他の哺乳類の感情と表情との関連性がダーウィンの着想を含め、これまで様々に研究されています。
こうした研究の蓄積が進化の謎や人間と関わる動物たちの感情―表情との関係性を解明するための示唆を与えてくれます。
人間と関わりの深い動物と言えば、犬です。犬の祖先はオオカミ。オオカミが人間と共存し、人間のパートナーとなっていく過程にどのようなコミュニケーションが行われていたのでしょうか。犬の表情研究がこの謎の解明にヒントを与えてくれます。
次のような実験が行われました。
実験の舞台は犬の保護施設。ケージに入れられた様々な犬がいます。個々の犬に研究者が近づきます。そうすると、それぞれの犬は(人間で言うところの)眉の内側を引き上げ、ハノ字眉を見せたり、しっぽを振ったりします。個々の犬ごとにそうした動きの頻度と継続時間を計測しておきます。そしてそれらの数値とこの施設の犬たちが新たな飼い主を見つける日数とが比べられました。
実験の結果、興味深いことがわかりました。
①眉の内側を引き上げる頻度が高い犬ほど、早く新しい飼い主を見つけられる。
②しっぽをたくさん振っても飼い主を早く見つけられるとは言えない。
ということです。
しっぽを沢山振っている犬の方が「可愛い」という印象を受けますが、しっぽよりも眉の内側を引き上げる表情の方が、私たちを惹きつけるようなのです。