アメリカで起きているセクハラ告発“パンデミック”が意味するもの

 レストランでウエイトレスをしている女性は、最初に職場に入ったとき店長から「セクシーな服装をするように」と言われ、スカートをはいていくようにした。あるとき狭い店長室に呼ばれ中に入ると、棚を整頓してくれと言われ脚立に上ってその通りにしていると、店長が椅子に座ってスカートの中をのぞいていた。それに気づいてからズボンをはいて働きセクハラに対抗していたのだが、あるとき自分の勤務が終わり帰ろうとすると、店長が粘りつくような視線を向け唇を舐めながら「お前は最後まで残れ」と言ってきた。危険を察して店長を振り切って帰り、その職場には二度と戻らなかったという。

「セクハラに厳しい米社会」の実像

 米国といえばセクハラ行為に厳しい社会というイメージが強かったが、実態はそうではないようだ。米4大ネットワークテレビのNBCと大手新聞社ウォールストリート・ジャーナルが10月に共同で発表した調査結果によると、米国の被雇用者女性の48%は職場でセクハラを受けたことがあると回答し、米国人67%が職場でのセクハラは日常的にあると回答している。  何がセクハラかという認識については、性別や個人によって異なっている。米ナショナル・セクシャルバイオレンス・リソースセンターの調査によると「挑発的または一方的な性的発言はセクハラだと感じる」女性は60%なのに対し男性は48%、「他人の秘めた行為を許可なく覗き見ることはセクハラだと感じる」女性は72%なのに対し男性は56%、「相手に性的関係を強要し同意させて行為に及ぶこと」は女性の79%がセクハラと認識するのに対し、男性は67%にとどまっている。(参照:「NSVRC」)  現在の「セクハラ告発パンデミック」はセクハラに対する認識を再確認し、問題意識を持たなければならないという、米社会の危機感の現れなのではないか。ワシントン・ポスト紙も「今のこの状況は、セクハラ問題の分水嶺となるのではないか」と書いている。(参照:「Washington Post」) <取材・文/水次祥子 Twitter ID:@mizutsugi> みずつぎしょうこ●ニューヨーク大学でジャーナリズムを学び、現在もニューヨークを拠点に取材執筆活動を行う。主な著書に『格下婚のススメ』(CCCメディアハウス)、『シンデレラは40歳。~アラフォー世代の結婚の選択~』(扶桑社文庫)、『野茂、イチローはメジャーで何を見たか』(アドレナライズ)など。(「水次祥子official site」)
みずつぎしょうこ●ニューヨーク大学でジャーナリズムを学び、現在もニューヨークを拠点に取材執筆活動を行う。主な著書に『格下婚のススメ』(CCCメディアハウス)、『シンデレラは40歳。~アラフォー世代の結婚の選択~』(扶桑社文庫)、『野茂、イチローはメジャーで何を見たか』(アドレナライズ)など。(「水次祥子official site」) Twitter ID:@mizutsugi
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シンデレラは40歳〜アラフォー世代の結婚の選択〜

うまく一歩を踏み出せない女。アラフォー世代の女たちの本音に迫るノンフィクションです。