ご当地プロレスは日本だけじゃない!  周辺諸国と積極的に交流する新台湾プロレス

“中二病キャラ”など、日本では見られないユニークな選手が目白押し!

 新台湾には、日本で見られるようなご当地ネタの選手はいないが、ユニークな選手はいる。SKYという選手はいわゆる「中二病」キャラクター(台湾では日本のアニメ・マンガの人気が高い)。詰襟の学生服で入場し、レフェリーにワガママを通そうとしたり、相手をおちょくったりと面倒くさいスタイルだ。

タイツに”中二之王”の文字が入っている、SKY。拙著『ローカルプロレスラー図鑑+2016』より

 SAKAという顔にペイントを施した、ヒール(悪役)選手も独特だ。隻腕のため左腕一本で闘うが、相手の攻撃をギリギリまで引きつけてかわしたり、コーナーの狭い空間でも瞬時に場所を替わったりと、身体的ハンディを強みに転換し、文字通り腕一本で闘い抜いている。

ハンディを感じさせない荒々しい闘いを見せるSAKA。

 レフェリーのスポンジケンは、日本へ留学していたことがあり、滞在中に全日本プロレスの興行に参加。ジャイアント馬場やジャンボ鶴田など裁いた試合は1万をゆうに越える、名レフェリー・和田京平の教えを受けている。選手ではないが、全日本の王道プロレスの「作法」を台湾に伝えている重要な存在だ。

台湾に王道プロレスを伝播させるスポンジケンレフェリー

 新台湾の当面の目標は、台湾内での認知度と選手レベルのふたつを上げていくことだ。台湾の中ではプロレスといえばWWE(World Wrestling Entertainment、アメリカ)という認識が大半だ。台湾の団体だけでなく、新日本プロレスやスターダム(女子プロレス)などが台湾で大会を開催しているが、それでもWWEには及んでいない。  だが、新台湾には可能性がある。20代~30代前半の若い選手が多いことだ。筆者は新台湾の大会を撤収まで取材したことがあるが、彼らの情熱は並々ならぬものがある。重労働といえるリング設営すら活き活きと取り組む。そこにはプロレスに対する愛と、大好きなプロレスを台湾でできることへの喜びにあふれていた。  機会があれば、ぜひ一度新台湾プロレスを観てほしい。他国の良いところを取り入れつつも“台湾の”プロレス文化を作ろうとする若者たちの姿に心打たれるはずだ。 <文・たこやきマシン> 【たこ焼きマシン】 名古屋在住のローカルプロレス探求家。ローカルプロレスファンサイトたこ焼きマシン.comスーパーたこ焼きマシン.comを運営。北海道から沖縄、台湾まで未知のプロレスを求め観戦に遠征する。ご当地プロレスラーガイドブック『ローカルプロレスラー図鑑』をクラウドファンディングで発行。オンラインストア。元・小中学校教員、障害者職業能力開発校講師。夢は世界中すべてのご当地プロレスを観戦しての『ワールドローカルプロレスラー図鑑』制作。
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(次回大会)
新台湾プロレス『勝者為王(Winner Takes It All)』
2017年12月16日(土) 15:00
海天武道館
https://www.facebook.com/NTWwrestling